研究課題/領域番号 |
15K08274
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永森 收志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90467572)
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研究分担者 |
大垣 隆一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20467525)
奥田 傑 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50511846)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 膜輸送複合体 / プロテオミクス / 腎臓 / トランスポーター |
研究実績の概要 |
研究代表者は、多数の近位尿細管管腔側膜輸送体と共に発現変動する遺伝子を、バイオインフォマティクスによって見出した。 その遺伝子がコードするタンパク質TRAPは、腎特異的に発現する新規膜タンパク質であり、近位尿細管管腔側膜 に局在した。TRAPノックアウトマウスは、Fanconi症候群類似の、糖・アミノ酸・尿酸の尿中排泄の顕著な上昇を示し、さらにそれらを輸送可能な複数の輸送体の局在が変化していた。 野生型マウスにおいてTRAPが様々な輸送体と複合体を形成していることから、TRAPと相互作用する管腔側膜輸送体群の全体像と、それら輸送体の局在をTRAPが制御する機構を明らかにすることを目指した。網羅的比較定量プロテオミクスにより、TRAPの欠失により発現量の影響を受ける輸送体を明らかにした。また、免疫染色により、TRAPが輸送体の局在を規定することを示す結果を得た。さらに、TRAPがどのように一群の管腔側膜輸送体と結合するかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網羅的比較定量プロテオミクスによるTRAPノックアウトマウス尿細管輸送体の変動解析をおこなった。近位尿細管で再吸収されるはずの栄養素や代謝物が尿中へ漏出する場合、それらの再吸収を担う輸送体の分子の機能自体が低下しているか、あるいは管腔側膜上での存在量が低下しているかの2つの可能性がある。TRAPノックアウトマウスの管腔側膜上での各輸送体の存在量を野生型マウスと比較することにより、TRAPの役割についての重要な情報を得た。変化が見いだされた輸送体のうち、いくつかについては、Western blotでその変化を確認するとともに、免疫染色を行い輸送体タンパク質の局在の変動を検討した。さらに高空間分解顕微鏡SIM (Structured illumination microscopy)を用いることで、TRAPノックアウトマウスにおいて、局在市の変化を示す輸送体の一部について、より正確な輸送体の局在位置の変化を把握することに成功した。さらに、尿細管管腔側膜画分膜小胞を調整し、複数の化合物の輸送機能を、アイソトープラベルした基質を用いて測定し、TRAPノックアウトマウスにおける輸送体の発現量変動と機能変化について、定量的な解析を進めた。 加えて、 管腔側膜輸送体の機能を維持するTRAPの役割の解析のために、抗TRAP抗体を用いて免疫沈降を行い、免疫沈降物を質量分析計で解析し、輸送体との複合体形成の有無を検討し、TRAPがどのように一群の管腔側膜輸送体と結合するかを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの詳細な検討から、近位尿細管管腔側膜輸送体のうち、TRAPと連携するものとしないものが明らかになる。TRAPと連携するものに存在し、連携しないものには存在しない、コンセンサス配列を探し、培養細胞発現系を用いた変異導入の解析により、輸送体がTRAPと連携するために必要な構造を明らかにする。輸送体がTRAPと連携するために必要な構造が明らかになると、それと相互作用するTRAPの構造も予測できる。同様に変異導入解析により、TRAPが輸送体と 相互作用するために必要な構造を決定する。 さらに、 TRAP自身が細胞膜移行に必要なTRAPの構造を明らかにする。いくつかの膜タンパク質においてC-末端の細胞内ドメインに細胞膜移行に必要な構造が見られるため、TRAPにおいても、C-末端そしてN-末端の部分欠損変異を作製し、部位特異的変異導入を併用して、TRAPの管腔側膜移行に必要な構造を決定する。そしてその変異が、共発現させた輸送体も引き連れた形で膜移行を阻害するかどうかを検討する。 TRAPとの物理的相互作用もしくはKOマウスにおける発現量の減少が見られている輸送体の中には、培養細胞にその遺伝子をトランスフェクションした場合、著しく発現量が低いものや輸送機能を示さないものが含まれていた。そこで、それらの輸送体とTRAPの共発現細胞を作成し、in vitro でTRAPの機能を発現することを試みる。TRAP以外の因子が、TRAPの機能発現に必要な場合も想定し、TRAPと複合体を形成する輸送体以外の因子についても検討を進める。TRAP機能のin vitro解析系を用いて、TRAP機能の分子機構の全体像を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入価格が,当初の見積額から変動したために若干の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進展により当初より旅費が必要となっているため、旅費に使用する予定である。
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