研究実績の概要 |
膵β細胞機能不全において、小胞体ストレスにより誘導される転写因子C/EBPβの発現を遺伝子改変 (J Clin Invest, 2010) あるいは薬剤 (J Mol Endocrinol, 2012) によって減少させると膵β細胞量は増加し、耐糖能は改善する。さらにC/EBPβの発現量はAMPKにより負に制御されていることを明らかにし(PLOS ONE, 2015)、Dominant Negative-AMPK下でC/EBPβの安定性に関与するリン酸化部位を新たに同定した。また、上流キナーゼとしてcasein kinase 2(CK2)を候補とした。そこで、CK2のC/EBPβとの関係、膵β細胞での役割について検討した。 小胞体ストレス関連分子であるC/EBPβを強発現したMIN6細胞および膵β細胞特異的C/EBPβTGマウスの膵β細胞では、C/EBPβとCK2α,CK2βは、ともに核において共局在していた。MIN6細胞において、CK2βを欠損させると、小胞体ストレスにより誘導されるC/EBPβ, CHOP, p-c-junなどのunfolded protein response(UPR)関連分子の発現は抑制されていた。膵β細胞特異的C/EBPβTGマウスにemodinを投与したところ、随時血糖や体重には有意な差を認めなかったが、空腹時血糖の有意な改善およびIntraperitoneal Glucose Tolerance Test(IPGTT)における耐糖能の改善を認めた。TGマウスで減少していた膵β細胞量は、emodin投与により有意に増加していた。 以上より、CK2阻害剤は、C/EBPβの発現を抑制することで、膵β細胞保護作用を発揮することが示唆された。CK2は、膵β細胞保護を目的とした治療ターゲットになり得ると考えている。
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