Niemann-Pick C1 Like1 (NPC1L1) は小腸上皮細胞と肝細胞に特異的に発現し、細胞表面から輸送小胞を経て小胞体へコレステロールを輸送する。一方、ORP (OSBP-related protein) ファミリーは、OSBP (Oxysterol-binding protein)とそのホモログ (ORP1~11) 計12種類の蛋白質を含み、その各々が特定の脂質のセンサーまたはキャリアーとして働く。HEK細胞での発現系において、ORP10はNPC1L1依存性のコレステロールの取り込みを増加させ、この効果は高LDL血症の危険因子となるORP10/D254アイソフォームでN254アイソフォームよりも顕著だった。ORP10はそのPHD (pleckstrin homology domain)を介してNPC1L1と蛋白質複合体を形成し、この形成はORP10のORD (OSBP-related domain)にコレステロールが結合することで抑制された。この蛋白質複合体には、NPC1L1とclathrinの間のアダプター蛋白質であるNumbも含まれていた。これらの結果は、ORP10がNPC1L1とNumbをつなぐリンカーとして働き、コレステロール濃度依存性の挙動をコントロールすることを示している。さらにFRET (fluorescence resonance energy transfer)により、ORP10/ D254アイソフォームはN254アイソフォームよりも“曲がりにくい”ことがわかった。この事は、NPC1L1の挙動に対する効果の違いが、D254アイソフォームが高LDL血症の危険因子となる理由である可能性を示唆する。
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