シヌクレインタンパク質はパーキンソン病やレビー小体型認知症の原因となっていると考えられる微小管結合タンパク質である。しかしながら、生理的な機能はまだほとんど明らかになっていない。本研究課題ではシヌクレインによる微小管の制御機構を明らかにし、中枢神経系の神経変性疾患発症につながるシヌクレインと微小管の間の分子機構を解明することを目的とした。 最終年度の研究計画は、神経細胞軸索内でのシヌクレインと微小管の関係を撮影したラット坐骨神経超薄切片電子顕微鏡像や免疫電子顕微鏡像の画像解析を引き続き継続して進め、その結果を発表し、次の研究課題につなげるシーズ探求であった。 前年度までの研究成果において、通常13本とされているほ乳類の微小管の構造に関して、初めて13本以外のプロトフィラメント数から構成される微小管の像を得て、1000本近くの微小管を解析し、統計を行った。さらにシヌクレインを用いた免疫電子顕微鏡観察において、シヌクレイン標識金コロイドはプロトフィラメントの本数が14本の微小管に多いことがわかった。本解析結果を踏まえて、当該年度では、神経軸索内輸送においてシヌクレインが細胞骨格性微小管と輸送性微小管を、微小管のプロトフィラメントの本数で識別しているというモデルを国内学会において発表し、シヌクレインの新規の生理的役割について提案を行った。本研究で発見し提案しているシヌクレインによる軸索輸送制御の実態を捉えるための顕微鏡法について様々な情報交換を行った。本成果の公表により、シヌクレインが神経細胞の軸索内輸送に重要な役割を果たしているという新たな細胞内輸送モデルを提案し、パーキンソン病やレビー小体型認知症発症につながる病理メカニズムに新規の情報を提供できた。
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