研究課題/領域番号 |
15K08284
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
杉本 博之 獨協医科大学, 医学部, 教授 (00235897)
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研究分担者 |
安戸 博美 獨協医科大学, 医学部, 助教 (10704885)
青山 智英子 獨協医科大学, 医学部, 助教 (90420778)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コレステロール25-ヒドロキシラーゼ / 25-ヒドロキシコレステロール / オキシステロール / Fetal bovine serum |
研究実績の概要 |
コレステロールが酵素反応により酸化されヒドロキシル化を受けた代謝産物はオキシステロールと総称される。代表的分子として25-ヒドロキシコレステロール(25-HC)が知られているが、これはコレステロールやリン脂質合成酵素の転写を抑制したり、インターフェロン刺激により分泌され抗ウイルス効果を示すなど多彩な生理活性を有することが最近明らかになってきた。 申請者はこの25-HCを細胞内で産生するコレステロール25-ヒドロキシラーゼ(CH25H)の活性調節機構を解明する目的で研究を進めてきた。この過程でFetal bovine serum (FBS)を細胞に投与するとCH25Hの転写が抑制されることを見出し、本研究の第一の目的はFBSに存在するCH25Hの転写を抑制する因子の精製及び同定である。 FBSをBligh-Dyer法で分画後、脂質層及び水層を48時間Serum-starve状態のNIH3T3細胞に添加し、細胞レベルでCH25HのmRNA量をRT-PCR解析により定量することで、CH25H転写抑制因子の存在を確認しながら精製を進めた。この結果、FBS中のCH25H転写抑制因子はFBSをBligh-Dyer法で分画した水層に認められた。この因子の活性は透析により消失せず、30kDaフィルターは通過しないが、100kDaフィルターは通過したことから、比較的分子量の大きな因子であると想定した。水層をProtease KやGlycosylpeptidaseで処理すると転写抑制活性が消失したことから、糖タンパク質ではないかと推測した。FBSをBligh-Dyer法で分画した水層をHPLC-逆層クロマトグラフィー(C18)を利用し精製分画を試みたところ、カラムに吸着し、アセトニトリルで溶出する分画に存在することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FBSをBligh-Dyer法で分画した水層をNIH3T3細胞に添加することで、細胞レベルのCH25Hの転写を抑制する因子が存在することを見出してきた。この水層をさらに逆層クロマトグラフィー(C18)を利用してHPLCにより精製したところ、CH25Hの転写を抑制する因子が溶出する分画が検出された。この分画をProtease KやGlycosylpeptidaseで処理すると抑制効果が消失するため、この因子は糖蛋白質ではないかと推測した。 そこで、この転写抑制活性が認められた溶出分画のトリプシン処理を行い、Triple-TOF (LC/MS/MS)により、この分画に認められる糖タンパク質の同定を試みた。その結果、CH25Hの転写抑制効果が認められる分画に一致して、糖タンパク質であるSemaphorin 3Cが同定できた。Semaphorin 3Cは神経細胞の軸索の伸長に関与することが知られている。現在Semaphorin 3CがFBS中のCH25Hの転写抑制因子であるのか否かを確認するため、Semaphorin 3Cの発現プラスミドを作成したり、精製したSemaphorin 3Cを作成し、細胞に発現させたり投与することで、Semaphorin 3Cの機能を解析している。このような状況であることから、研究は概ね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
Semaphorin 3CがCH25Hの転写抑制因子であることを想定して当面研究を進める予定である。Semaphorin 3CがCH25Hの転写抑制因子でない場合でも、HPLC-逆層クロマトグラフィー(C18)を利用し精製した分画にはCH25Hの転写抑制因子が存在しており、今後もこの分画のトリプシン処理とTriple-TOF (LC/MS/MS)による解析を繰り返すことで、抑制因子の同定は成し遂げられると推測できる。 転写抑制因子が同定された場合には、どのような機構により転写抑制に働くのか、そのシグナル伝達機構の解明を進める。おそらく細胞膜受容体を介して作用していることが想定されるので、受容体の同定も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
FBSからのCH25Hの転写抑制因子の同定を進めてきたが、どのような方法で精製を進めることができるのか、手段の選択に研究時間が必要であった。現在はHPLC(C18)による精製で、安定して抑制因子を得ることができるようになり、この分画を質量分析装置により解析できるようにもなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後も精製を進め、同定を行い、発現タンパク質の作成や発現タンパク質の入手のため研究費を利用する。さらに、抑制因子の受容体の同定を含めたシグナル伝達機構の解明のためにも利用する。
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