研究課題/領域番号 |
15K08286
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
安達 三美 帝京大学, 医学部, 准教授 (10323693)
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研究分担者 |
岡崎 具樹 帝京大学, 医学部, 教授 (60203973)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ステロイド / 副腎皮質細胞 / p38MAPK / GADD45A / エトポシド |
研究実績の概要 |
副腎皮質ステロイドホルモンの一種である糖質コルチコイドは、その受容体GRと、主にNFkBとの相互作用を介して、免疫反応、炎症などの生体に与えられたストレスを緩和する方向へ導く。近年、加齢に伴う、うつ、不安、神経変性疾患、免疫、代謝性疾患における、糖質コルチコイドの関与が解析され、その老化における役割が注目されている。本申請のテーマは、加齢による糖質コルチコイド合成系の変化と老化への影響の解析である。平成28年度までに、ヒト副腎皮質腫瘍細胞株H295R細胞に、細胞老化を惹起させるため、エトポシドとH2O2を添加し、それぞれDNA損傷と酸化ストレスを引き起こした。その結果、ステロイド産生及び分泌が促進され、ステロイド合成系酵素の遺伝子発現の亢進が認められた。さらにストレス応答因子GADD45A遺伝子発現の顕著な増加を見出し、siRNAによるこの遺伝子発現ノックダウンによって、EP誘発後のステロイド合成系の遺伝子及びタンパク質の発現、コルチゾールの産生はすべて抑制された。またGADD45Aの発現ベクターの強制発現により亢進したステロイド合成系が、ストレスキナーゼであるp38MAPKに依存的であることが明らかになった。以上から、H295R細胞において、DNA損傷を誘導すると、糖質コルチコイドの産生の亢進が起こり、GADD45A→p38MAPKを介することが明らかになった(論文revise中)。平成29年度からは、マウスの実験を行った。24ヶ月齢以上の高齢マウスと3-4ヶ月齢の若いマウスの血清を採取して、コルチコステロン等のステロイドホルモン濃度の解析、および副腎皮質・下垂体を摘出して、DNAマイクロアレイ、RT-qPCRにて遺伝子発現の比較解析、免疫組織学的解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNA損傷や酸化ストレスにより、糖質コルチコイド産生が促進されるメカニズムの一端が明らかになったため、概ね順調に経過していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)老齢マウスや、様々なストレスを与えたマウスモデルを作成し、糖質コルチコイド合成能が上昇するか解析する。 (2)DNA損傷や酸化ストレスを与えた際に、ステロイド合成が促進される生理的な意義について細胞及び個体レベルで探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)本研究テーマは、加齢による糖質コルチコイド合成系の変化と老化への影響の解析である。これまでの研究期間中に、副腎皮質腫瘍細胞株に、薬剤による細胞老化を惹起させると、糖質コルチコイドの産生が活性化されることを見出した。マウスの研究に着手しているが、24ヶ月以上生存可能なマウスが少ないため、予定期間内に実験が終了しなかった。 (次年度における未使用額の使用計画)高齢マウス臓器組織におけるゲノミクス、免疫組織学的解析などを、次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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