研究課題/領域番号 |
15K08287
|
研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
稲垣 秀人 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 講師 (70308849)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | X連鎖 / モザイク |
研究実績の概要 |
メンデル遺伝病の常識では、X連鎖遺伝は、男性は重症、女性は軽症あるいはキャリアとなる。女性の重症例は男性の胎生致死や不活化の偏りなどで説明される。ところが、Xq12のEFNB1遺伝子の変異が原因で起こる頭蓋・前額・鼻症候群(CFNS)では、女性重症、男性軽症であることが知られ、そのメカニズムについて未知な点が多い。この現象を説明する仮説としては、女性の体で起こるX染色体のランダムな不活化が挙げられている。それにより正常Xと変異Xの細胞が混在するモザイク状態となり、この混在状態により発生過程において正常な形態形成が撹乱される可能性が示唆されている。実際に重症例の男性では変異がモザイクであることが明らかにされ、この説を支持している。そこで本研究では、このモザイク状態でおこる分子メカニズムを、in vitroで再現する系を確立することを目指す。前年度は、当研究機関で発見されたCFNSの2例を含め、その変異を有するEFNB1(リガンド)タンパク質を精製し、in vitroのプルダウンアッセイにて、EPHB2(レセプター)との結合能を変化させることを見出した。本年度は、この変異を有するEFNB1を強制発現するヒト培養細胞を作成し、レセプター発現細胞との相互作用の効果を検討した。EFNB1発現細胞はEPHB2発現細胞と接触すると反発し、migrationの速度が低下する。その速度を野生型と変異型において検討したところ、変異型では野生型と比較して反発しにくい結果が得られた。さらに、野生型EFNB1細胞との混在状態において同様に速度を検討したところ、変異型単独と比較してさらに速度が低下する結果が得られた。一部詳細を検討する必要のあるデータではあるが、おおむねランダム不活化説を支持する結果が得られた。今後は培養条件などの最適化をおこない、また別の角度からの実験からも検証する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、モザイク撹乱節を示すデータが蓄積してきている。今後の裏付け実験で確認後論文を作成する目処がたった。
|
今後の研究の推進方策 |
培養細胞における再現系は、体で起こる複雑な発生過程を、培養ディッシュで単純な系に還元して検証するが、培養条件などが複雑に絡み、再現する条件を見いだすことが難しい。当初は3次元培養も想定したが、より単純な2次元での培養細胞の移動を数値化し、比較検討できるようなデータにすることを最終目標とする。研究期間内に終了できるめどがたった。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予測よりも効率的に実験が進んだため、消耗品の実支出額が少なかった。また国際学会への出張費が使用されなかったため、実支出額が少なくなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記の理由で使用されなかった分を翌年度分とし、条件検討などやや増加すると予想される実験の消耗品などに効率的に使用する予定である。
|