研究課題
以前より我々は癌細胞細胞表層の糖鎖の合成・発現・分解に関与する糖鎖関連遺伝子の転写解析機構を解析してきたが、これまでに検討してきた転写因子のうち、hypoxia inducible factor (HIF)はとりわけ多数の糖鎖関連遺伝子の転写調節に関わっている。我々は癌細胞で重要な役割を演じる細胞接着分子CD44のリガンドであるヒアルロン酸の合成酵素遺伝子、HAS1, HAS2, HAS3のうちHAS3が低酸素により転写誘導され、またヒアルロン酸の分解酵素遺伝子のうちHYAL1もまた低酸素により転写誘導されることを見いだした。レポーターアッセイおよびChIPアッセイにより、この転写誘導がHIFによるものであることを実験的に確認した。さらに癌細胞においてHAS3およびHYAL1をshRNAによってノックダウンした安定的クローンを得て動物実験を行ったところ、HYAL1のノックダウンによって腫瘍の増生が統計的に有意に抑制されることを見いだした。この結果は、HYAL1が癌治療の有力なターゲット遺伝子であることを示唆する。また最近、低酸素による転写誘導にmicroRNAによる調節が関与していることが知られ始めたので、癌細胞において低酸素で誘導される糖鎖関連遺伝子についてmicroRNAの関与を検出するために3'-UTR部のレポーターコンストラクトを作成してレポーターアッセイを行い、またMiaTrapアッセイを行ったところ、糖鎖関連遺伝子のうちGCNT2がmiR-199というmicroRNAによって強く調節されていることを見いだした。糖鎖関連遺伝子GCNT2は低酸素により誘導されることが知られ、また上皮-間葉転換においても有意に誘導され、CD44-ヒアルロン酸系と同じく癌細胞の運動能や浸潤能に深く関与している事も判明した。これも癌治療の有力なターゲット遺伝子のひとつである可能性がある。
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