• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

ADPリボシル化酵素C3のRhoGTPase認識機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K08289
研究機関京都産業大学

研究代表者

津下 英明  京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (40299342)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードC3 / ADPリボシル化 / RhoA / Cdc42 / Rac1 / X線結晶構造解析 / 複合体 / 構造酵素学
研究実績の概要

セレウス菌由来のRhoA特異的ADPリボシル化毒素C3(C3cer)とその基質タンパクRhoAの複合体結晶を作成し、結晶構造解析を進めた。C3-RhoA(GTP)結晶を用いて、この構造を決定、次にこの結晶にNADH(不活性な補酵素)をソーキングすることで、NADH-C3-RhoA(GTP)の構造を決定した。同様にC3-RhoA(GDP)の結晶を作り、これにNADHをソーキングすることで、NADH-C3-RhoA(GDP)の構造を解析した。C3ではNAD結合部位周りの4つの領域とC3cerに特異的と思われる1つの領域が結合に関与している。また、シグナルスイッチであるRhoAではswitch I、interswitch, switch IIからなる約50アミノ酸領域がその結合に重要であった。この複合体結晶構造から次の結果が得られた。(1)C3と結合することで、RhoA(GTP)もRhoA(GDP)も、この結合領域が同じコンフォメーションをとり、どちらもADPリボシル化の基質になることができる。(2)C3のARTTループのGln183が,基質RhoAの修飾アミノ酸であるAsn41を認識することで、基質のアミノ酸の特異性を出していることが予想されてきたが、この構造から実験的に初めてC3 Gln183とRhoA Asn41が塩橋を作り、基質認識、すなわち修飾アミノ酸の選択をしていることを明らかにした。(3)さらに複合体の構造を基に酵素基質改変を行った。C3はRhoA特異的であり、同じRhoファミリーでAsn41を持つRac1やCdc42は良い基質とならない。Cdc42の結合部位の4つのアミノ酸に着目して4重変異体を作ることにより、C3cerの良い基質とすることに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

C3 enzymeは1989年の以来、そのRhoAに対する特異性から、Rhoシグナルカスケードを知るための重要な道具として用いられてきた。C3およびRhoAそれぞれ単体の構造解析はなされてきたが、多くの情報をもたらす複合体のX線結晶構造解析は長く期待されていたが、なされていなかった。この研究で、その複合体構造を明らかにした。特に重要な点は、RhoAとのタンパク質特異性と修飾されるアミノ酸の特異性を明らかにした点である。上記の結果を、Journal of Biological Chemistry誌(J Biol Chem. 7;290(32):19423-32. (2015))に発表した。さらにEuropean Workshop on Bacterial Protein Toxins(ETOX17)で招待され口頭講演を行った。またC3とRhoAのお互いの認識するための構造柔軟性についてPathogen Disease誌(Pathog Dis. 73(9)(2015))にレビューをまとめた。

今後の研究の推進方策

C3-RhoA結晶を用いてNAD+をソーキングすることで結晶内でADPリボシル化させ、構造解析することは次の目標である。また、基質改変によりCdc42を良い基質に改変に成功しているが、次の目標はC3側の改変ができるかに興味がある。すなわち、Rac1やCdc42を認識してADPリボシル化する酵素に改変できないか探る。
既に我々は異なる特異性を持つADPリボシル化毒素Iaとactinの複合体の結晶構造解析に成功している。IaはアクチンのArg177特異的にADPリボシル化する。C3とIaの活性ドメインは非常に似た構造をしているが、その基質タンパク質と基質アミノ酸(修飾アミノ酸)は全く異なる。この2つの複合体Ia-アクチンとC3-RhoAの結晶構造を明らかにしたことでADPリボシル化の分子機構について多くの知見が得られた。現在ARTCファミリーで基質タンパク質複合体の構造はこの2つしか得られていない。今後、両者の類似点と相違点を詳細に検討していくことで、反応の類似性および違いを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

今年度の研究が予想以上に早く進み、論文掲載(JBC)およびタイムリーな国際学会(ETOX17)での発表につながった。

次年度使用額の使用計画

前年度の研究をより発展させ、ADPリボシル化毒素の基質特異性と反応機構に迫る経費として用いて、オリジナリティのある研究を進めたい。
特にRhoAとC3の結合定数を測るためのラベリング試薬、ADPリボシル化を見るためのFITC試薬
に使用予定。また今までの研究成果を国際学会等で発表するために用いたい。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Rho GTPase Recognition by C3 Exoenzyme Based on C3-RhoA Complex Structure2015

    • 著者名/発表者名
      Toda A, Tsurumura T, Yoshida T, Tsumori Y, Tsuge H.
    • 雑誌名

      J Biol Chem

      巻: 290 ページ: 19423-32

    • DOI

      10.1074/jbc.M115.653220.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Conformational plasticity is crucial for C3-RhoA complex formation by ARTT-loop2015

    • 著者名/発表者名
      Tsuge H, Yoshida T, Tsurumura T
    • 雑誌名

      Pathog Dis

      巻: 73 ページ: -

    • DOI

      10.1093/femspd/ftv094.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] ADPリボシル化毒素C3がシグナル伝達阻害を引き起こすしくみ2016

    • 著者名/発表者名
      津下英明
    • 学会等名
      日本細菌学会
    • 発表場所
      大阪国際交流センター(大阪府、大阪市)
    • 年月日
      2016-03-23 – 2016-03-25
  • [学会発表] Structural basis of ADP-ribosyltransferase C3 exoenzyme with RhoA complex2015

    • 著者名/発表者名
      戸田暁之、鶴村俊治、吉田徹、津守耶良、津下英明
    • 学会等名
      日本生物物理学会
    • 発表場所
      金沢大学(石川県、金沢市)
    • 年月日
      2015-09-13 – 2015-09-15
  • [学会発表] Structural basis of Bacterial ADP-ribosyltransferase and Human Protein Complex2015

    • 著者名/発表者名
      Hideaki Tsuge
    • 学会等名
      European Workshop on Bacterial Protein Toxins
    • 発表場所
      Braga, Portugal
    • 年月日
      2015-06-20 – 2015-06-24
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 津下英明教授のグループがRhoA特異的ADPリボシル化酵素C3とRhoA複合体の結晶構造解析に成功

    • URL

      http://www.kyoto-su.ac.jp/department/nls/news/20150619_news.html

  • [備考] ADPリボシル化酵素C3がシグナル伝達阻害を引き起こすしくみ

    • URL

      http://www2.kek.jp/imss/news/2015/topics/0624C3RhoA/

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi