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2016 年度 実施状況報告書

ADPリボシル化酵素C3のRhoGTPase認識機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K08289
研究機関京都産業大学

研究代表者

津下 英明  京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (40299342)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードADPリボシル化 / 細菌毒素 / 基質タンパク質認識 / X線結晶構造解析 / タンパク質複合体 / C3 / Ia / CPILE-a
研究実績の概要

近年日本で起きた食中毒で、ウェルシュ菌のエンテロトキシン(CPE)欠損株の関与が疑われ、新規の食中毒毒素が見出された。この毒素はClostridium perfringens iota-like toxin (CPILE)と命名された。CPILEはCPILE-a, CPILE-bの2つのコンポーネントからなるbinary毒素である。ウェルシュ菌のIota毒素(Ia,Ib)との相同性は50%程度であるが、その毒性に違いがあることが報告された。Iota毒素ではIaはアクチン特異的なADPリボシル化毒素、一方Ibは細胞膜上でオリゴマーを作り、Iaを透過するトランスポーターと考えられている。CPILEの食中毒原因毒素としてのアッセイすなわち腸管を用いたFluid accumulating 活性は、CPILE-bのみでもあり、CPILE-aで増強することが示されている。我々は、食中毒毒素の作用機構解明のためCPILE-aの構造機能解析を行った。
CPILE-aの結晶はPEGを沈殿剤として得られ、初期位相は水銀を用いたMAD法で得られた。この後、構造精密化し、最終構造を得た。今回得られた構造は3種類であり、基質なし、NAD+複合体(本来の基質であるNAD+が結合したもの)、NADH複合体である。Iaと構造を比較すると、Iaにはない2つのExtra Protruding Loop(PT-Iと PT-II)が存在することがわかった。すでに我々のグループで研究が進んでいる、Iaと基質タンパクのアクチンとの複合体との結晶構造から、CPILE-a-actin複合体のモデルを構築し、アクチン結合部位と思われるアミノ酸の変異体を作成して、その役割を検討した。CPILE-aでは、loop-II~IVと領域外のPT-Iの変異体もαアクチンとの結合すなわち活性に影響することがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

セレウス菌のC3毒素はRhoAを認識しADPリボシル化する。2015年、我々はC3-RhoAの複合体構造解析に成功しC3毒素の基質認識機構を明らかにした(JBC 2015:本科研費研究初年度)。この基質認識機構の解析から、RhoAとCdc42の多重変異体作成をして、後者を非常に良い基質とすることに成功した。またIaはウェルシュ菌のADPリボシル化毒素であり、我々は2008年にその基質アクチンとの複合体の構造を明らかにしている(PNAS 2008,PNAS 2013)。これら基質タンパク質複合体の解析により、相手のタンパク質が違う(RhoA vs actin) また修飾するアミノ酸が異なった(Arg vs Asn) ADPリボシル化毒素C3とIaの比較研究が大きく進んだ。今年、Iaと相同でヒト腸管感染に関わるCPILE-aの構造と機能を解析した。この研究により、更に研究の新たな目標が見えてきた。CPILEはIota毒素と相同であるが、ヒト感染症に関わるより重用なバイナリー毒素である。その毒性の理解を更に進めるにはADPリボシル化する酵素成分だけでなく膜透過成分からの検討が必要となる。

今後の研究の推進方策

Iota毒素ではIaはアクチン特異的なADPリボシル化毒素、一方Ibは細胞膜上でオリゴマーを作り、Iaを透過するトランスポーターと考えられている。また相同なCPILEではCPILE-bはIbと異なるリセプターを認識する、CPILE-aを膜透過させるトランスポーターである。現在、IbおよびCPILE-bは構造が未知であり、膜結合のタンパク質透過装置である。これらの構造と機能の研究を進めていく。相同性は低いながら、このトランスポーターは炭疽菌の毒素PAと似ていると考えられている。炭疽菌では酵素成分はADPリボシル化毒素ではなく、浮腫因子EFと致死因子LFである。IbおよびCPILE-bもPAと同じくオリゴマーを形成し、膜に孔をあけ、この孔を解けた酵素成分が通過すると考えられている。このタンパク質透過装置の研究により、(1)酵素成分がいかに透過装置と相互作用するか、(2)酵素成分をunfolding, foldingさせる一般的な機構の理解が進むと期待できる。

次年度使用額が生じた理由

初年度に予想外に研究計画が大きく進んだこと、また昨年その発表のための国際学会が
国内で行われたことも幸いして、予算が次年度の繰越となった。

次年度使用額の使用計画

2015年にヨーロッパでの毒素のシンポジウムETOX17で日本から唯一の招待講演を行い、初年度の研究成果を報告している。これに続く海外学会シンポジウムETOX18での研究成果発表をしたいと考えている。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Comparative Studies of Actin- and Rho-Specific ADP-Ribosylating Toxins: Insight from Structural Biology2017

    • 著者名/発表者名
      Tsuge H, Tsurumura T, Toda A, Murata H, Toniti W, Yoshida T.
    • 雑誌名

      Curr Top Microbiol Immunol.

      巻: 399 ページ: 69-86

    • DOI

      10.1007/82_2016_23.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Crystal structure and structure-based mutagenesis of actin-specific ADP-ribosylating toxin CPILE-a as novel enterotoxin2017

    • 著者名/発表者名
      Toniti W, Yoshida T, Tsurumura T, Irikura D, Monma C, Kamata Y, Tsuge H.
    • 雑誌名

      PLoS One.

      巻: Feb 15 ページ: -

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0171278. eCollection 2017.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] C3 exoenzymeとRhoA複合体の結晶構造解析に基づく基質特異性2016

    • 著者名/発表者名
      津下英明、戸田暁之、鶴村俊治、吉田徹
    • 学会等名
      日本分子生物学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜)
    • 年月日
      2016-12-02
  • [学会発表] Characterization of Actin ADP-ribosyltransferase from Clostridium perfringens iota-like enterotoxin2016

    • 著者名/発表者名
      Waraphan Toniti, Toru Yoshida, Toshiharu Tsurumura, Daisuke Irikura, Chie Monma, Yoichi Kamata, and Hideaki Tsuge
    • 学会等名
      ICC05-AEM2016
    • 発表場所
      宇奈月国際会館(富山)
    • 年月日
      2016-09-08
  • [学会発表] ADP-ribosylation of RhoA by C3 exoenzyme.2016

    • 著者名/発表者名
      Toru Yoshida, and Hideaki Tsuge
    • 学会等名
      ICC05-AEM2016
    • 発表場所
      宇奈月国際会館(富山)
    • 年月日
      2016-09-08
  • [備考] 『Photon Factory Highlight 2015』に総合生命科学部の2つの研究成果が掲載

    • URL

      https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20161003_400n_news.html

  • [備考] 津下 英明 教授らの研究グループが新しく見つかったウェルシュ菌食中毒に関わる毒素の構造と機能を解明

    • URL

      https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20170218_400n_news.html

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公開日: 2018-01-16  

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