研究課題/領域番号 |
15K08291
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
香城 諭 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 上級研究員 (70360542)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | T細胞受容体Vα14Jα18 / NKT細胞特異的転写因子 / T細胞受容体遺伝子再構成 / クロマチン制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、NKT細胞特異的遺伝子再構成に際するクロマチン変化を捉え、その制御因子の同定の試みを通して、NKT細胞系列決定機構の一端を明らかにすることを目的とする。 1. 細胞分化に伴うVα14Jα18受容体遺伝子領域クロマチン構造の時間的変: NKTクローンマウスより作成したNKT-ES細胞を用い、ESからNKT細胞への分化過程におけるVα14領域のクロマチン構造変化を、ヒストン修飾を指標としてChIP-qPCR法にて確認した。 2. Vα14Jα18受容体遺伝子再構成部位へ集積する制御因子の同定: NKT細胞において、Vα14Jα18受容体遺伝子再構成部位へ集積する制御因子を同定するために、Vα14遺伝子配列を利用したDNAプルダウンアッセイを実施し、複数の結合タンパク質を同定した。また、プロモーター部位のDNA配列解析の結果、Vα14プロモーター部に特異的に結合配列が存在する転写因子群の存在も確認した。 NKT-ES細胞を利用し、TCR Cα下流に蛍光レポーターを挿入したマウスを作成した。本マウスにおいてはNKT細胞受容体α鎖の発現をモニターでき、胸腺におけるNKT細胞受容体α鎖発現直後の細胞(NKT前駆細胞)を検出することが可能となる。NKT前駆細胞を分取し、発現遺伝子をRNA-seq法にて確認した。その結果、NKT前駆細胞特異的に発現する遺伝子群の存在を確認した。 3. 同定された候補因子のNKT細胞受容体Vα14Jα18遺伝子再構成への関与:同定された制御因子候補についてCRISPR/Cas9を用いて10系統の遺伝子欠損マウスを作成した(現在13系統を追加で作成中)。遺伝子欠損マウスの解析を進め、2系統においてNKT細胞の著減を確認した。また、1系統においてサイトカイン産生の減少を確認した。現在これらの減少が遺伝子再構成への関与によるものか否かを確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度研究計画に記載した「細胞分化に伴うVα14Jα18受容体遺伝子領域クロマチン構造の時間的変動」については解析を終了している。28年度以降の計画として記載した「Vα14Jα18受容体遺伝子再構成部位へ集積する制御因子の同定」については、複数の観点からの検討により、候補因子の同定をほぼ終了した。同定した候補因子についての遺伝子ノックアウトマウスの作成も順調に進み、「Vα14/Jα18遺伝子領域への集積因子について、遺伝子再構成への関与を検証」の項に関する結果も収集中であり、一部ポジティブな結果を得ている。以上の進捗状況により、上記区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
同定した制御因子について、10系統の遺伝子欠損マウスを作成し解析に供したが、現在13系統の遺伝子欠損マウスを作成中である。本13系統の遺伝子欠損マウスの作成を完遂する。 現在までに作成した10系統の遺伝子欠損マウスのうち、2系統においてNKT細胞の著減を確認した。T細胞やその他の細胞集団には影響が認められないため、NKT細胞特異的な制御機構の破綻によるものと考えられる。この2系統について、NKT細胞の減少機構の解明を進め、遺伝子再構成機構の破綻によるものであることを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室保有の試薬類にて効率的に研究を進捗させることが可能であった。次年度に予定している遺伝子欠損マウス作成および解析に大きな予算を必要とすることが想定されたため、次年度使用額として計上した。
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次年度使用額の使用計画 |
・ノックアウトマウスの作成 ・候補制御因子による遺伝子組換え機構への関与確認(ChIP解析、細胞培養、ゲノム解析、次世代シークエンシングなど) に使用予定
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