研究課題/領域番号 |
15K08295
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松永 耕一 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (20570162)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インスリン分泌 / Rab27 / Exophilin |
研究実績の概要 |
インスリン分泌は、分泌顆粒の厳密な輸送制御によって行われている。この過程には単量体GTPase Rab27が、そのエフェクターであるExophilinファミリーたんぱく質を介して機能していることが知られている。その中でExophilin8を介した詳細な分子メカニズムは未だ不明な点が多く、in vivoで実際にどのような機能を有するかも明らかになっていない。Exophilinファミリーたんぱく質の一つである、Exophilin8のインスリン分泌における機能を解明するため、ノックアウトマウスを作成し、解析したところ、Exophilin8ノックアウトβ細胞ではグルコース刺激、及び細胞内cAMP産生を高めるForskolin存在下でのグルコース刺激によるインスリン分泌が、野生型と比べて有意に低下した。次に耐糖能試験を行ったところ、腹腔内投与のグルコース負荷において、耐糖能が野生型に比べて低下した。これらの知見はExophilin8が、in vivoでグルコース応答性のインスリン分泌を制御していることを示した。次に本分子の作用機構を調べるために、Exophilin8結合たんぱく質の探索を行ったところ、未報告の新規結合たんぱく質が数種類同定された。そのなかの一つの新規結合たんぱく質に着目し、詳細な解析を行った。新規Exophilin8複合体成分を、siRNAを用いたノックダウンにより発現を抑制すると、グルコース刺激下でのインスリン分泌が著しく減少した。さらに細胞頂端に集中して存在するインスリン顆粒が消失し、顆粒の分布が顕著に変化していることが示された。これらのことから、Exophilin8とこの新規たんぱく質が複合体を形成することが、インスリン分泌を効率よく行うのに必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Rab27aエフェクターExophilin8のノックアウトマウスを作成し、解析することにより、本分子がインスリン分泌において重要な役割をしていることを示したのは本研究が世界初である。さらに網羅的な結合タンパク質探索により、未発表の新規結合タンパク質群を同定した。その中の一つに着目して解析を進めたところ、これらExophilin8-新規結合たんぱく質複合体が、インスリン顆粒を細胞頂端側に集中して局在させ、効率よく開口放出させるのに必要であることを明らかにした。これらの知見は現在論文にまとめ、国際誌に投稿中である。このように本研究課題は非常に順調に進展しており、当初の計画以上に進展していると考えられる 。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は現在論文投稿中であるが、それとは別に幾つかExophilin8複合体について、新規の機能を発見している。これら新規の機能を引き続き解析し、新たなインスリン分泌機構を解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題に使用する消耗品や試薬類と同様の物で使用期限の近いものが研究室内に在庫として残っていたので、それらを優先して使用することにした。しかしながら次年度において購入予定の試薬類は、当初の計画以上に研究が進展しているため、さらに投稿中であることから、論文修正に必要な実験がより多く必要になることが予想されるため、これらに必要な実験消耗品をまとめて次年度に購入する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞培養器具や培地、試薬類の購入と実験マウスの購入、管理費が研究費の使途になる。さらにこれまでに得られたデータ等を国内外に発表するための旅費や、論文投稿等の費用にも使用する。
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