本研究課題は、申請者がその予備的知見として、MGLが高脂肪食負荷による肥満モデルにおける肥満抑制に寄与することを見出したことに基づき、MGLによるモノグリセリド代謝がどのようなメカニズムでエネルギー代謝に関わるかを明らかにすることを目的としたものである。 マウス個体のエネルギー代謝を明らかにする手法として、2重水標識法によるマウス個体のエネルギー消費測定法の改良を実施した。即ち、H2[18O]およびD2O含有量のGCMS測定のための水誘導体化において、ジアゾメタンの代わりにトリメチルシリルジアゾメタンを用いた場合にH2[18O]の濃度依存的にD2O測定誤差が生じ、これを正確に補正・算出する手法を確立したことを前年度実績報告において記載したが、本年度は、この新しい手法を用いて、MGL欠損マウスと野生型マウスの基底状態におけるエネルギー消費量の比較データを詳細に検討した。その結果、MGL欠損マウスと野生型マウスのエネルギー消費量に有意な違いは見られず、このことから、高脂肪食負荷による肥満モデルにおける肥満抑制は、エネルギー消費量の違いが主たる要因ではないことが明らかとなった。 MGL欠損マウスにおいて、摂餌後の摂食行動が野生型マウスに比べて抑制され、これが腸管から迷走神経依存的なメカニズムで引き起こされることなどから、MGL欠損による肥満抑制のメカニズムは、腸管におけるMGLの作用が非常に重要であると考えられた。 MGLの腸管における作用の分子メカニズムについては、本研究課題の実施期間中に明らかにすることが出来なかったが、今後これを明らかにするような研究課題を実施することにより、エネルギー代謝と摂食行動における腸管脂質吸収の重要性を明らかにできると考えられる。
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