研究課題
ビタミンDの生理作用はカルシウム代謝、細胞の増殖・分化など多岐にわたるが、これらの生理作用はビタミンD受容体(VDR)を介した標的遺伝子の転写制御により発揮される。現在までにビタミンDは大腸癌の発症リスクを低下させるという疫学的研究結果が報告されており、また自身のこれまでの研究によりVDR遺伝子欠損(VDRKO)マウスは野生型マウスに比べ炎症性腸疾患の症状が重篤化することが明らかになったが、いずれもその分子メカニズムについては不明な点が多く、カルシウム代謝を介した間接的な作用によるものか、大腸におけるVDRの直接作用によるものかは明らかになっていない。そこで本研究では大腸特異的VDRKOマウスの作出および解析を行うことにより、小腸や腎臓におけるカルシウム代謝調節を無視できる系において、大腸におけるVDRの高次機能の解明をめざす。現在までに所属大学における動物実験および遺伝子組み換え実験に関する一連の手続きが完了し、大腸特異的Cre発現マウスを米国のジャクソン研究所から購入後、また、大腸特異的VDRKOマウスの作出に必要なVDR floxマウスについては徳島大学における一連の手続きが完了後、学内のSPFの動物施設に導入するため体外受精によるクリーニングを行った。その際、大腸特異的Cre発現マウスの精巣上体から採取した精子およびVDR floxマウスから採取した卵をそれぞれ体外受精に供することにより、クリーニングと同時に大腸特異的Cre(tg/0)/VDR flox/+の遺伝子型をもつ仔マウスが得られた。
2: おおむね順調に進展している
本研究は研究実施期間である3年間のうちに大腸特異的VDRKOマウスの作出および解析を行うことにより、小腸や腎臓におけるカルシウム代謝調節を無視できる系において、大腸におけるVDRの高次機能の解明をめざすものであるが、当初使用を予定していた大腸特異的Cre発現マウスの系統は米国のジャクソン研究所において凍結胚で維持されているものの、凍結胚を直接購入することができず、ジャクソン研究所において凍結胚からの個体化後のマウスしか購入できないことが判明した。これでは当初予定していた計画よりも余計に時間も個体化費用もかかってしまうため、計画を変更し成体マウスで系統維持されている別の大腸特異的Cre発現マウスを用いることとした。また本学の動物施設導入のためのクリーニングの際には大腸特異的Cre発現マウスとVDR floxマウスからそれぞれ精子と卵を採取し体外受精に供することで大腸特異的Cre(tg/0)/VDR flox/+の遺伝子型をもつ仔マウスが得られた。今後交配を進めていくことにより大腸特異的Cre(tg/0)/VDR flox/floxマウスの作出および解析が可能となることから、初年度である本年度は当初の計画通りおおむね順調に進展していると考える。
今後、大腸特異的Cre(tg/0)/VDR flox/+の遺伝子型をもつマウス同士の交配により大腸特異的Cre(tg/0)/VDR flox/floxマウスの作出および解析を行うが、どのような組み合わせで交配させれば目的とする遺伝子型のマウスを効率的にかつ最小限の犠牲で得られるかをよく考え研究を進めていく予定である。また大腸特異的VDRKOマウスが得られた際には大腸の表現型の解析はもちろん、全身的なカルシウム代謝異常がおきていないか、腎臓や小腸における表現型の解析についてもまず第一に行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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