研究課題
がん細胞のストレス応答による遺伝制御が、発がん・がん抑制と関わることで難治がんの治療に深く関係する。転写因子ATF3は、増殖因子や抗がん剤などに応答するストレス応答遺伝子であるが、我々は、これまでATF3が、JNK経路、小胞体ストレスATF4/CHOP経路やp53、c-Mycの標的遺伝子であることを報告しているが、不明な点が多く残されている。本研究課題では、p53/ATF3のヘテロ・ダブルノックアウトマウスを用いた自然発がんの発症率およびDNA障害応答の遺伝子制御のシステムズ解析、ヒト大腸がんHCT116細胞におけるWnt-ATF3経路の同定と生物機能解析、を目的とした。その結果、①ATF3とp53のダブルノックアウトマウスでは、p53単独ノックアウトよりも、自然発がんの発症増加と生存率の低下が見られたことから、ATF3がp53標的遺伝子であると同時にp53非依存性のがん抑制作用があることが示された。細胞レベルでの遺伝子制御のシステムズ解析もp53非依存性の経路を示唆した(論文執筆中)。②ヒト大腸がんHCT116細胞は、ヘテロのβ-catenin遺伝子異常(wt/mut)を有するが、それぞれの遺伝子欠損細胞(wt/null, mut/null)が報告されている。本研究では、HCT116細胞においてATF3がβ-cqtenin/TCF4直接結合型の標的遺伝子であることを明らかにした。これは、すでに報告されている前立腺と同様であった。マウスのXenograftおよび細胞遊走、浸潤実験から、ATF3はこれらを抑制していた。この結果は、ATF3が発がん経路Wntの標的遺伝子であるものの、がん抑制に働くことを意味している。①、②の成果は、ATF3ががん抑制遺伝子であることを明らかにしたものであり、難治がん治療の戦略に応用する基盤研究を提示したものである。
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PLOSONE
巻: 10 ページ: 18
doi: 10.1371/journal.pone.0194160
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 8789
doi: 10.1038/s41598-017-08584-9.
http://www.tmd.ac.jp/mri/bgen/message.html