本研究では、癌の様々な病態におけるオートファジーの役割及び障害の生物学的な意義を詳細に解析し、オートファジー活性の有無に基づいた新たな治療戦略とオートファジー活性の測定方法を開発することを目的として研究を行ってきた。 これまで、研究課題の1つとして、小児急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia; ALL)に着目して研究を進めてきた。ALLの治療において、L-asparaginase(L-asp)が使用されている。我々は、(1)L-aspをALL細胞に処理により、劇的な細胞内代謝の不活性化とミトコンドリア傷害が惹起されること、(2)その際、傷害ミトコンドリアを除去するためにオートファジーが活性すること、(3)オートファジー阻害剤との併用処理は、p53依存性のアポトーシスを誘導し、L-aspの感受性を増強することを見出した。このことは、ALLでは、オートファジー活性に依存して治療抵抗性が発揮されるALLに対しては、そのオートファジー活性を阻害する治療戦略が有用であることを示唆している。 また、様々な癌種由来細胞株を用いた化合物ライブラリー探索等により、オートファジー活性の有無によって、感受性が異なる複数の化合物を同定してきた。これらの研究成果は、オートファジー活性を基盤としたALLを含む癌に対する新たな治療戦略の確立とオートファジー活性の測定法の開発のため分子基盤となると考えている。
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