Ube3aの欠損したアンジェルマン症候群モデルマウス及び野生型マウスの脳海馬を用いて、トランスクリプトーム解析の結果、Ube3aによる広範囲な転写レベルでの制御機構が示唆された。またパスウェイ解析の結果、これらの遺伝子群には免疫関連遺伝子が多く存在することを明らかにした。さらに、それら変化のあった遺伝子群の上流因子としてIRF転写因子を同定し、結合実験、レポーターアッセイからIRF2がUbe3aの標的であることを明らかにした。 IRF2の神経系における役割を明らかにするためにIRF2ノックアウト(KO)マウスを用いた網羅的行動解析を行った。Rotarodテストにおいて、IRF2KOマウスは野生型と比較して加速するロッド上を歩ける時間が短いという結果を得て、IRF2KOマウスは小脳由来の運動機能に異常がある可能性が考えられた。しかしFoot printテストでは、KOマウスと野生型マウスで歩行時の手足の角度に有意な差は認められなかった。 またIRF2KOマウスの小脳の形態的解析を行った。小脳の各葉の数、分子層の厚さを解析するため、ニッスル染色を行ったが、これらの形態に異常は認められなかった。プルキンエ細胞の樹状突起の形態を解析するため、カルビンジン抗体を用いて免疫組織染色を行った結果、KOマウスではプルキンエ細胞の樹状突起の伸長に異常がある可能性が考えられたがゴルジ染色では異常が認められなかった。 以上の結果から、IRF2KOマウスの小脳に関しては、形態的にも機能的にもアンジェルマン症候群で見られるような症状を説明する異常は見出せなかった。
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