研究課題
ヒト乳腺上皮細胞株MCF10Aを用いて、増殖因子EGF, Amphiregulin (AREG)、およびその受容体EGF受容体(EGFR)が果たす役割を解析した。本課題は2012-15年に交付を受けた基盤研究Cをさらに発展させるものであり、本年度は引き続き、昨年度に投稿した論文の採択に向けた実験を行った。具体的には、EGF/AREGシグナルとTGFbシグナルとの関係性、ERKの活性化強度の検討である。注目すべき点として、TGFbは上皮間葉転換の制御因子であるSnailの発現を変動させるのに対し、EGF/AREGシグナルはZEB1の発現変動を誘導することが分かった。即ち、TGFbとEGFによる上皮間葉特性の制御は、関与する転写因子そのものが異なることが分かった。また濃度の異なるEGFはERKの活性化強度を変え、乳腺細胞特性に影響を与えることも明らかにした。最終的に、これらの成果は、申請者が筆頭著者兼責任共著者として、Scientific Reportsに掲載された。一方、上記とは別に、乳腺上皮細胞の極性を制御し得る因子の解析として、低分子GTPaseであるRab31の研究を行った。その結果、Rab31は(1) EGF刺激で間葉化させた細胞集団で発現が高い、(2) 恒常活性化型変異Rab31は初期エンドソームの肥大化を引き起こす、ことを明らかにした。現在、Rab31の活性が上皮間葉特性の制御に関与するか否かについて検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
EGF受容体経路の解析については、当初の目的通り、論文の採択まで到達することができた。Rab31については学内で共同研究を始めたところである。
2016年1月より米国Vanderbilt大学に滞在し、ヒト乳腺細胞の初代培養に関する技術を習得している。また滞在先の研究室のプロジェクトに参加し、EGF受容体経路下流のキナーゼの解析、その阻害剤の開発に関わっている。今後はヒト乳がん及び抗がん剤開発という2つのプロジェクトを進める予定である。
投稿した雑誌の出版費が当初の予想を下回ったため。
消耗品である抗体の購入に充てる予定である
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
J Biol Chem.
巻: 291 ページ: 10490
10.1074/jbc.M115.683201
Sci Rep.
巻: 6 ページ: 20209
10.1038/srep20209.
http://www.m.ehime-u.ac.jp/school/biochem2/