研究課題/領域番号 |
15K08311
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
川口 真紀子 宮崎大学, 医学部, 助教 (90405598)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セリンプロテアーゼ / セリンプロテアーゼインヒビター / 腸管発癌 / HAI-1 |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞膜結合クニッツ型セリンプロテアーゼインヒビターであるHepatocyte growth factor activator inhibitor type 1 (HAI-1) によるプロテアーゼ活性制御の腸管発癌における意義を明らかにすることである。H27年度は、HAI-1 ノックアウト(KO)でみられる腸管発癌の亢進に、HAI-1標的プロテアーゼの基質であるProtease - activated receptor -2(PAR-2)が関与するかを確認するために、HAI-1,PAR-2ダブルKOマウスを作製した。まず、HAI-1 KOマウスと、HAI-1,PAR-2ダブルKOマウスの定常状態における腸管の表現型を解析したところ、両者に違いはみられなかった。次に、腸管発癌におけるPAR-2の関与を検討するため、これらのKOマウスを用いてアゾキシメタン、デキストラン硫酸(AOM, DSS)投与による炎症関連大腸化学発癌モデルと、多段階発癌モデルマウスであるApcMin/+マウスを作製した。現在、それぞれのマウスで各5匹程度のモデルマウスを作製したが、PAR-2発現の有無と腸管発癌との間に明らかな関与は認められなかった。次年度以降、さらにモデル数を増やし、両群の比較を行う予定である。 また、HAI-1をほとんど発現していない大腸癌細胞株SW480細胞に、レンチウィルスを用いてHAI-1強制発現を行い、HAI-1発現の有無と癌細胞の悪性形質について検討を行った。SW480細胞にHAI-1を発現させると、増殖能は亢進したが、遊走、浸潤能は低下し、HAI-1が大腸癌細胞の浸潤を抑制する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸管発癌モデルマウス作製、HAI-1発現を調節した大腸癌細胞株の樹立など、H27年度に計画していた内容は順調に進展している。しかし、HAI-1の標的酵素のPAR-2以外の基質についての検討はまだできておらず、次年度の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
HAI-1 KOマウスと、HAI-1,PAR-2ダブルKOマウスを用いて腸管発癌モデルを作製し、HAI-1KOマウスでみられた腸管発癌亢進にPAR-2が関与するかを検討した。現在のところ、両群5匹程度の比較ではあるが、PAR-2発現の有無による腫瘍形成数に明らかな違いは認められない。このことから、次年度以降、モデルマウスの数を増やして検討を続けながら、HAI-1の標的酵素のPAR-2以外の基質にも着目し、必要に応じて新たな遺伝子改変マウスの導入も検討する必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
PCR装置の購入を予定していたが、別予算で購入したため、形上していた予算は消耗品に使用し、一部差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は動物実験の頭数を増やしていく予定のため、生じた次年度使用額はマウスに投与する阻害剤の購入にあてる計画である。
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