研究課題/領域番号 |
15K08312
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
堀尾 嘉幸 札幌医科大学, 医学部, 教授 (30181530)
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研究分担者 |
浜田 博喜 岡山理科大学, 理学部, 教授 (10164914)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 筋ジストロフィー / SIRT1 / オートファジー / マイトファジー / 臨床研究 / Duchenne型 / Becker型 / 福山型 |
研究実績の概要 |
筋ジストロフィーは遺伝性に筋力低下を起こす疾患であり、細胞外マトリックスと細胞内のアクチンを結びつけるジストログリカン複合体を構成するたんぱく質の遺伝的異常により惹起される。我々はSIRT1の活性化がマウスのDuchenne型モデルであるmdxマウスの骨格筋および心筋の病態を著しく改善することを見出した。このメカニズムには酸化ストレス(ROS)を亢進させるNoxファミリーの発現減少、ROSを増加させるTGFベータの下流でのシグナル低下、さらに骨格筋では筋タイプが遅筋型に変わることが関与すること、さらに、アセチル化酵素p300をユビキチン化して減少させることがその背景にあることを見出したが、その他の原因も存在することが考えられた。 28年度の研究では27年度に引き続き、(1) 筋ジストロフィー骨格筋や心筋ではオートファジーの機能が著しく低下していること、オートファジーの低下によって障害ミトコンドリアのオートファジー(マイトファジー)が抑制されていることさらに検討し明らかとした。障害ミトコンドリアは細胞内ROSの最も大きな発生原因であるため、マイトファジー低下がジストロフィー筋肉の持つROSの主たる原因である可能性がきわめて高いことが判明した。(2) 札幌医科大学付属病院において、Duchenne型、Becker型、福山型の筋ジストロフィー患者さん合計11名に対して、レスベラトロールの投与を行う臨床研究を行った。半数以上で、指のつまむ力が2倍以上に、肩を上げる力が2倍以上になったことを確認したが、さらに、患者レスベラトロール血中濃度の測定を行い、基本的には投与量に比例して血中濃度が高まることを確認した。レスベラトロール血中濃度と血中クレアチンキナーゼの低下などの効果を現在詳細に解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1) mdxというDuchenne型筋ジストロフィーモデルマウスを使ってmTORシグナル活性化によって、オートファジーが抑制されていること、さらに、レスベラトロールがオートファジーを進めることをmdxマウスを使って明らかにすることができ、in vivoにおいてSIRT1を介したレスベラトロールの作用が病態治療に有用である根拠を提示することができたものと考えている。 (2) 臨床研究として、筋ジストロフィー患者さん(Duchenne型、Becker型、福山型)11名に6か月間、健康食品として市販されているレスベラトロールを投与して、筋力向上、血中クレアチンキナーゼ低下作用を観察した。全く新しい種類の筋ジストロフィー治療薬でとしてレスベラトロールを開発する根拠が得られたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1) SIRT1活性化は骨格筋と心筋において、オートファジーとマイトファジー(ミトコンドリアオートファジー)の促進による筋酸化ストレス低下作用をすすめて、筋ジストロフィー症の進行を抑制することを論文として発表する。 (2) レスベラトロールを使った筋ジストロフィー患者さんの治療についての臨床研究を論文化する。 (3) 骨格筋特異的SIRT1ノックアウトマウスを用いて、SIRT1の骨格筋での機能をさらに明らかとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験について、研究スタートが購入動物手配の遅延(業者側の事由)のため、大きく遅れたこと、in vitor実験系で使用する消耗品について予想よりも少額で実験遂行ができたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に動物実験の遅れを取り戻すよう最大限努力を行う。また、消耗品について、次年度分によりqualityの高い研究を行い、さらに信頼性のあるデータ提供を行う。
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