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2016 年度 実施状況報告書

生理活性脂質受容体の上皮バリア機能における役割

研究課題

研究課題/領域番号 15K08316
研究機関順天堂大学

研究代表者

佐伯 和子  順天堂大学, 医学部, 准教授 (00553273)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード生理活性脂質 / Gタンパク質共役型受容体 / 上皮細胞
研究実績の概要

BLT2は上皮細胞に発現するGタンパク質共役型受容体で、12-HHTと呼ばれる脂肪酸に応答して細胞内にシグナルを伝達する。昨年度、肺炎球菌の産生する毒素性タンパク質Pneumolysin(PLY)の気道内投与により、BLT2欠損マウスのほとんどが30分以内に死亡すること、またその要因が気管支収縮亢進と血管透過性の亢進による肺水腫である可能性が高いことを明らかにした。
これらの現象を引き起こしている原因分子を突止める目的で、肺胞洗浄液中に含まれるエイコサノイド類を質量分析計にて一斉定量したところ、PLY投与後すぐに野性型およびBLT2欠損マウス肺で大量のシステニルロイコトリエン類(CysLTs: LTC4・LTD4・LTE4)が産生さていることが明らかとなった。そこで、CysLT受容体(CysLT1)拮抗薬(モンテルカスト)の前投与を行ったところ、野性型とBLT2欠損の両マウスでPLY依存的な気道収縮および血管からの漏出が完全に消失し、BLT2欠損マウスの致死率も改善された。モンテルカストは、気管支喘息やアレルギー性鼻炎を対象として既に認可されている薬剤であるが、本研究によって肺炎致死を改善する薬として使用できる可能性が示唆された。
一方、BLT2の高親和性リガンド12-HHTは、シクロオキシゲナーゼ(COX)依存的に産生される脂肪酸であり、NSAIDs(COX阻害薬)によって産生が阻害される。そこで、野性型マウスにNSAIDsの前投与を行ってみたところ、PLY依存的な致死が増悪した。この結果から、NSAIDs投与は肺炎致死を増悪させる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PLYの気道内投与による急性肺障害モデルを施行し、野性型マウスでは生存できる濃度のPLY投与によりBLT2欠損マウスのほとんどの個体が死に至ること、またPLY投与で産生されるCysLTsが気道収縮と血管透過性の亢進を招くことが原因であることを明らかにした。更にこの過程で、CysLT1拮抗薬が肺炎致死の改善薬となり得ること、NSAIDsが増悪因子となり得ることを明らかにした。以上の内容はScientific Reportsに掲載され、おおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

12-HHT/BLT2軸がPLYを用いた急性肺損傷モデルにおいて保護に作用することを明らかにしたものの、詳細なメカニズムについては不明な点も残されている。BLT2の欠損がCysLTsの感受性を亢進させていると考えられるが、その原因は不明であり、細胞レベルで解析することで、作用機序を明らかにしていく予定である。
また、BLT2は腸管上皮にも発現していることから、12-HHT/BLT2軸の腸管における役割についても明らかにしていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

ほぼ予定通り研究を遂行し、大部分は試薬等の消耗品に使用した。しかし、最終年度に遺伝子改変マウスの凍結胚保存を行う予定が出て来たため、一部は来年度に使用することとした。

次年度使用額の使用計画

余剰分の193,107円は来年度分と合わせて消耗品および旅費として使用する予定で、研究を終了する時には本研究に使用した遺伝子改変マウスの凍結胚保存を行う予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Georgia State University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Georgia State University
  • [雑誌論文] Leukotriene B4 receptor type 2 protects against pneumolysin-dependent acute lung injury.2016

    • 著者名/発表者名
      Shigematsu M, Koga T, Ishimori A, Saeki K, Ishii Y, Taketomi Y, Ohba M, Jo-Watanabe A, Okuno T, Harada N, Harayama T, Shindou H, Li J D, Murakami M, Hoka S, Yokomizo T
    • 雑誌名

      Sci Rep

      巻: 6 ページ: 34560

    • DOI

      doi:10.1038/srep34560

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Modulation of leukotriene B4 receptor 1 signaling by receptor for advanced glycation end products (RAGE).2016

    • 著者名/発表者名
      Ichiki T, Koga T, Okuno T, Saeki K, Yamamoto Y, Yamamoto H, Sakaguchi M, Yokomizo T
    • 雑誌名

      FASEB J

      巻: 30 ページ: 1811-1822

    • DOI

      doi:10.1096/fj.201500117

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Raftlin Controls Lipopolysaccharide-Induced TLR4 Internalization and TICAM-1 Signaling in a Cell Type-Specific Manner.2016

    • 著者名/発表者名
      Tatematsu M, Yoshida R, Morioka Y, Ishii N, Funami K, Watanabe A, Saeki K, Seya T, Matsumoto M
    • 雑誌名

      J Immunol

      巻: 196 ページ: 3865-3876

    • DOI

      doi: 10.4049/jimmunol.1501734

    • 査読あり
  • [学会発表] Protective roles of 12-hydroxyheptadecatrienoic acid/BLT2 in acute lung injury.2017

    • 著者名/発表者名
      Shigematsu M, Koga T, Saeki K, Ohba M, Okuno T, Yokomizo T
    • 学会等名
      Keystone Symposium, Lipidomics and Bioactive Lipids in Metabolism and Disease
    • 発表場所
      Granlibakken Tahoe (USA)
    • 年月日
      2017-02-26 – 2017-03-03
    • 国際学会
  • [学会発表] RAGEはロイコトリエンB4第一受容体BLT1と機能的に相互作用する2016

    • 著者名/発表者名
      市木貴子, 古賀友紹, 奥野利明, 佐伯和子, 阪口政清, 山本靖彦, 横溝岳彦
    • 学会等名
      第89回日本生化学会
    • 発表場所
      仙台国際センター (仙台)
    • 年月日
      2016-09-25 – 2016-09-27
  • [学会発表] The roles of 12-hydroxyheptadecatrienoic acid/BLT2 axis in skin.2016

    • 著者名/発表者名
      Shigematsu M, Koga T, Saeki K, Okuno T, Yokomizo T
    • 学会等名
      57th ICBL, International Conference on the Bioscience of Lipids
    • 発表場所
      Chamonix-Mont-Blanc (France)
    • 年月日
      2016-09-04 – 2016-09-08
    • 国際学会
  • [学会発表] 12-hydroxyheptadecatrienoic acid (12-HHT) as a novel lipid mediator.2016

    • 著者名/発表者名
      Yokomizo T, Ishii Y, Shimegatsu M, Saeki K, Okuno T
    • 学会等名
      第58回日本脂質生化学会
    • 発表場所
      にぎわい交流館AU (秋田)
    • 年月日
      2016-06-09 – 2016-06-10
    • 招待講演
  • [学会発表] BLT2 receptor protects against lethal acute lung injury induced by a pneumococcal toxin pneumolysin.2016

    • 著者名/発表者名
      Shigematsu M, Koga T, Saeki K, Okuno T, Yokomizo T
    • 学会等名
      ASBMB meeting
    • 発表場所
      San Diego (USA)
    • 年月日
      2016-04-02 – 2016-04-06
    • 国際学会
  • [学会発表] Leukotriene B4 receptor type 2 (BLT2) enhances skin barrier function by regulating tight junction proteins.2016

    • 著者名/発表者名
      Ishii Y, Saeki K, Yokomizo T
    • 学会等名
      ASBMB meeting
    • 発表場所
      San Diego (USA)
    • 年月日
      2016-04-02 – 2016-04-06
    • 国際学会
  • [学会発表] Receptor for advanced glycation endproducts modulates leukotriene B4 receptor 1 signaling.2016

    • 著者名/発表者名
      Ichiki T, Koga T, Okuno T, Saeki K, Yamamoto Y, Sakaguchi M, Yokomizo T
    • 学会等名
      ASBMB meeting
    • 発表場所
      San Diego (USA)
    • 年月日
      2016-04-02 – 2016-04-06
    • 国際学会
  • [備考] 順天堂大学医学部生化学第一講座ホームページ

    • URL

      http://plaza.umin.ac.jp/j_bio/Biochem1/Top.html

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-16  

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