研究課題
BLT2は上皮細胞および血管内皮細胞に発現するGタンパク質共役型受容体である。これまでに、肺炎球菌の産生する毒素性タンパク質Pneumolysin(PLY)の気道内投与により、BLT2欠損マウスのほとんどが死亡することを見いだしている。PLY投与による主な死因はシステニルロイコトリエン類(CysLTs)の産生上昇による気管支収縮と血管内皮透過性の亢進による肺水腫であると考えられるが、CysLT受容体拮抗薬の前投与によっても3割程度の個体はレスキューできずに死に至る。このことから、BLT2欠損マウスのPLY投与による個体死は、気管支収縮や血管内皮透過性の亢進以外の経路によっても引き起こされていると考えられる。BLT2は肺胞上皮細胞においても発現が高いことから、PLY投与による肺胞上皮細胞の障害にBLT2が保護的に作用する可能性を考えた。そこで、肺胞上皮細胞にBLT2を過剰発現させ、MOCK細胞との間でPLYによる細胞死の程度を比較したところ、PLYによる細胞膜孔の形成および細胞死が有意に抑制された。現在、野性型およびBLT2欠損マウスより採取した初代培養上皮細胞を用いて内因性BLT2の役割を確認するとともに、BLT2による細胞死回避の詳細な分子メカニズムを解析中である。一方、BLT2欠損マウスにおいてデキストラン硫酸(DSS)誘導性大腸炎が亢進することから、BLT2は大腸炎においても保護的に作用すると考えられる。そこで、野性型マウスにDSSを投与すると同時にBLT2作動薬を連日腹腔内投与し、大腸炎の予防・治療効果を調べた。対照群と比較してBLT2作動薬投与群ではわずかに体重減少が抑制されたものの、効果は軽微であった。これは、消化管出血によりBLT2の内在性リガンドである12-HHTが大量に産生されたことから、本疾患モデルではBLT2作動薬の上乗せ効果が見えづらかったのではないかと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目標は、上皮細胞における12-HHT/BLT2の役割を各種疾患モデルを用いて明らかにすることであった。これまでに、急性肺傷害モデルおよびアトピー性皮膚炎モデルを施行し、両疾患モデルにおいて12-HHT/BLT2シグナルが保護的に作用していることを明らかにし、Scientific Report、FASEB JournalおよびSeminars in Immunologyに報告した。また、それらの結果さらに深く掘り下げる目的で、現在詳細な分子メカニズムを詰めている段階であり、今後論文にまとめていく予定である。
これまでの研究成果をH30年の日本生化学会のシンポジウムで報告するとともに、BLT2による上皮細胞死回避の詳細な分子メカニズムを明らかにしていく予定である。
本研究の成果をH30年度の日本生化学会のシンポジウムで報告することが決定したため、学会参加の旅費として使用する為に延長を行った。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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