本研究では、がん浸潤・転移に重要な役割を果たすMMP9の発現メカニズムとして、MMP9の発現を抑制する機構に焦点をあてた解析を行い、以下①~⑤を明らかにした。 平成29年度では、これまでの成果に基づき、当該機構ががん転移に寄与することを検証した。当該機構を人為的に操作した乳がん細胞の転移能を、マウス尾静脈転移モデルと同所性移植転移モデルで評価し、当該機構の破綻ががん転移を促進させることを明らかにした。また、これまで得られた成果をまとめ、国際学会 (EMBO Conference on Redox Biology) にて発表した。この学会で得られた意見や提案を基に、ブラッシュアップを行い、本研究内容を国際雑誌に投稿した。
① 本制御機構はMMP9発現を抑制的に制御し、その構成因子は、細胞接着斑-核両局在性のアダプター分子HIC-5、ミトコンドリア由来活性酸素種 (ROS)、NADPH oxidase 4 (NOX4) である。② HIC-5はミトコンドリア由来ROSレベルを抑制的に制御する。③ ミトコンドリア由来ROSはMMP9特異的にmRNAを安定化し、その発現を上昇させる。④ ミトコンドリア由来ROS産生源として、NOX4を特定し、HIC-5はNOX4発現を抑制的に制御する。⑤ 本制御機構は変異型Rasを有する細胞株で観察され、本機構の因子は悪性度診断や予後に有用であると考えられた。
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