研究課題/領域番号 |
15K08318
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
濱田 浩一 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (00343070)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞内pH変化 / 転移 / IRBIT |
研究実績の概要 |
生体の恒常性の維持には、細胞内pH を厳密に制御する必要があり、正常細胞の細胞内pHは 7.2 付近に維持されている。さらに細胞の移動速度やがんの転移能は、細胞内pH変化と高い相関性を持つことが報告されている。このことは「細胞内pH制御による細胞移動の分子メカニズムを明らかにすることで、転移を制御できる可能性」を示している。 本研究でフォーカスしているIRBITは、IP3(イノシトール3リン酸)受容体に結合しIP3と競合的に働くことで、細胞内Ca2+濃度を制御する分子として同定されたタンパク質である。また、IRBITにはN末端が長いLong-IRBITと呼ばれているホモログ分子がIRBITファミリーを形成している。そしてIRBITファミリーは、IP3受容体だけでなく種々のpH制御分子に結合し、それらの活性を制御することで、細胞内pHを厳密に調節していることが報告されているにも注目されている これまでに我々は、①siRNAを用いたノックダウン細胞を用いた結果より、IRBITおよびLong-IRBITは、細胞移動を亢進させている。②マス解析および免疫沈降の解析により、IRBITおよびLong-IRBITは陰イオン交換体と結合していた。③細胞内pHを測定したところLong-IRBITノックダウン細胞では、塩素イオンの反応性が低下していた。 今後はこれらの結合の生理的な意義および細胞内pH変化における作用を明らかにすると共に、「IRBITファミリーを新たな創薬ターゲットとした悪性治療の開発」を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書ではIRBITファミリーによる細胞内pH制御を介した細胞移動能、転移能の役割解明を計画している。 平成28年度の研究により、 ①転移能の異なったマウス及びヒトメラノーマ細胞株で、IRBITファミリーの発現を検討したところ転移能に伴ってLong-IRBITのmRNAおよびタンパク質の発現が上昇していた ②IRBITおよびLong-IRBITノックダウン細胞を作製し、細胞移動能を検討したところ、IRBITよりLong-IRBITノックダウン細胞の方が細胞移動能は低下していた ③IRBITファミリーに結合する分子を同定するために、マススペクトロメトリーにより解析を行ったところ、陰イオン交換体Anion Exchanger 2(以下AE2と略す)を新規に同定した ④Long-IRBITノックダウン細胞はAE2の陰イオン交換能が低下していた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度、27年度28年度明らかにしてきたことを元に、 ●IRBITファミリーとAE2の結合の意義の検討 ●IRBIT/Long-IRBIT及びAE2による細胞移動能・浸潤能制御機構の検討 ●マウス転移モデル系における転移能の検討 ●固形腫瘍におけるIRBITファミリーの機能解析 のことを明らかにしようと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
調達方法の工夫などにより、当初計画より経費の節約ができたため
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次年度使用額の使用計画 |
マウス転移モデル系では、データーの信憑性を上げるために、当初計画していたものより多くの個体を使用して研究を進める。従ってこれらの実験のために経費が必要である。
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