研究実績の概要 |
WKY, SHR, SHRSP由来の脳血管内皮細胞の単層培養系を用いた検討では、バリアー機能の指標である経内皮電気抵抗(TEER)に大差がないことが判明した。しかし、バリアー機能を担うタイトジャンクション(TJ)構成タンパク質(ZO-1, occludin, claudin-5)の発現を比較したところ、SHRおよびSHRSPではWKYに比べ、claudin-5の発現が低下し、occluinの発現が亢進していることが判明した。WKYと比べ、SHRおよびSHRSPではTJタンパク質の発現比が異なっており、バリアー機能の質が異なることが示唆された。また、血液脳関門(BBB)に発現しているトランスポーターを比較したところ、SHRとSHRSPでは、WKYに比べ排出系のトランスポーターであるP-糖タンパク質の発現が亢進していた。BBBは内皮細胞だけでなく、その周囲の細胞であるペリサイトとアストロサイトにより構成・維持されている。そこで、BBB構成細胞であるアストロサイトと ペリサイトをWKYとSHRSPより単離培養し、共培養系を作製した。TEERによるバリアー機能評価の結果、SHRSP由来のアストロサイトはWKY由来のアストロサイトに比べ、バリアー機能の強化作用が弱いことが判明した。この時、TJタンパク質であるoccludinとcludin-5の発現はSHRSPで有意に低下していた。一方、SHRSP由来のペリサイトとWKY由来のペリサイトとの共培養系の比較では、SHRSP由来のペリサイトはWKY由来のペリサイトに比べ、バリアー機能の強化作用が強い傾向がみられた。更に、アストロサイトとペリサイト、内皮細胞の3種細胞共培養系では、WKY由来のモデルがSHRSP由来のモデルよりも有意にバリアー機能が高いことが判明した。以上の事から、SHRSPではBBB構成細胞間の相互作用に乱れが生じており、バリアー機能が低下していることが示唆された。
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