研究課題/領域番号 |
15K08324
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
後藤 英仁 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍医化学部, 室長 (20393126)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分裂期 / キナーゼ / 中心体 / Aurora-A / Plk1 |
研究実績の概要 |
細胞は、増殖停止に伴い、中心体が細胞表面に移動し、基底小体(中心体の母中心小体から変換された構造物)から一次線毛(シリア)と呼ばれる細胞外突起物を形成する。この一次線毛は、液流などの外界の環境を検知したり、形態形成因子(モルフォーゲン)、ホルモン、成長因子などの外界の信号を細胞内に伝達するアンテナとして機能したりしている。この一次線毛の形成および機能異常は、内臓逆位、多嚢胞腎などの先天性奇形、肥満、糖尿病などの種々の疾患の病因となっている。 この一次線毛は、多くの場合、細胞が増殖を開始するとともに退縮する。つまり、一次線毛と細胞増殖には負の相関関係といえる。我々および他の研究グループは、分裂期キナーゼであるAurora-AとPolo-like kinase 1 (Plk1) が分裂間期においても弱く中心体で活性化することで、細胞増殖時に一次線毛の形成を抑制していることを明らかにした。しかし、分裂間期におけるAurora-AとPlk1のシグナル伝達経路はまだ不明な点が多い。本研究では、分裂間期におけるAurora-AとPlk1の機能解析を行うため、当初、CRISPR/Cas9をジーンターケット法で各キナーゼのアナログ感受性細胞の樹立を試みた。しかし、残念ながら、ヒト網膜色素上皮細胞(RPE1細胞)でヘテロ接合体は樹立できたが、ホモ接合体の樹立はできなかった。そのため、アッセイ系を変更し、auxin-inducible degron (AID) をそれぞれの遺伝子座に付加することで、各キナーゼの機能を抑制する細胞株の樹立を現在試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、分裂期キナーゼであるAurora-AおよびPlk1の分裂間期における新規の基質を検索するため、CRISPR/Cas9をジーンターケット法でこれらキナーゼのアナログ感受性細胞の樹立を試みた。この細胞が確立できれば、基質検索が容易になると考えられたが、アナログ感受性変異によってキナーゼ活性が低下するためか、正常2倍体細胞であるRPE1細胞ではヘテロ接合体までしか(つまり、ホモ接合体は)樹立できなかった。このような反省を踏まえ、薬剤を添加する前のキナーゼ活性が保たれると考えられるAIDのシステムの構築を開始した。上記の理由により、研究の進行が当初計画よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
AIDのシステムは、auxinの添加により、素早く蛋白質が分解される系であり、HCT116細胞を用い、他のキナーゼを標的にした系を確立することは我々の手でも成功している。もちろん、一次線毛を形成するRPE1細胞などで成功しないとAurora-AおよびPlk1の機能解析はしづらいので、今後も試行錯誤は必要と考える。しかし、予備実験段階では、少しずつ、状況が好転しつつあり、このまま、方向で研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画通りに進まなかった部分があり、新規基質の同定のための質量分析解析などの費用を次年度にまわすことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
各キナーゼのAID細胞株を樹立し、新規基質の同定のための質量分析解析を行う。
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