研究実績の概要 |
加齢性神経変性疾患である認知症の根本治療薬の開発は高齢化が急速に進む我が国のみならず欧米先進国の喫緊の課題である。これまでに認知症の50%以上を占めるアルツハイマー病(AD)においてアミロイド仮説に基づき神経毒とされるアミロイドβペプチド(Aβ)の産生抑制剤及び免疫療法の開発が行われて来たが何れも成功しておらず、アミロイド仮説が揺らぎ始めている。本研究の目的は、ADの前段階である軽度認知症及びAD患者の脳細胞(アストロサイト及び神経細胞)由来の血漿中エクソソームの多層的オミックス解析、即ち、トランスクリプトーム解析(miRNA)、メタボロミクス、プロテオミクスのnon-biased3層解析を行うことにより、その分子病態に迫り、ADの予防法や根本治療薬の開発に資する新たな科学的基盤を提供することにある。 本研究では血漿に含まれる神経細胞由来エクソソーム(NDE)及びアストロサイト由来エクソソーム(ADE)の単離法の確立を試みた。その結果、ExoQuickを使用して濃縮した全エクソソームからL1CAMやグルタミントランスポーターを利用した既報の方法「Fiandaca et al., Alzheimers Dement. 11:600-607, (2014)およびMustapic, et al., Frontiers in Neuroscience, 11:278, (2017)」では再現性良くNDEを単離することができず、当初目標とした多層的オミックス解析を実施するには至らなかった。ExoQuick 濃縮で凝集(あるいは融合)が原因である可能性が高い。この結果を受けて、今後はExoQuick を使用しないNDE及びADEの単離法の確立を行う予定である。
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