研究課題/領域番号 |
15K08327
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
牧野 悟士 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 研究支援者 (30423403)
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研究分担者 |
田宮 元 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (10317745)
遠山 育夫 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 教授 (20207533)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人類遺伝学 / ミトコンドリア / 末梢神経疾患 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリア機能の障害に由来する疾患のうち、シトクロムcオキシダーゼ(COX;呼吸鎖複合体IV)欠損は、呼吸鎖の機能不全を伴う疾患のなかで最も多く観察される障害のひとつである。これは、COXの複合体形成やその安定化のために必要なアセンブリ因子が数多く存在する(酵母で30、ヒトでは6)ことや、いくつかのサブユニット(COX4, COX5, COX6A)には組織特異的アイソフォームが存在することから、アセンブリパスウェイが複雑なものとなっていることに起因するものと考えられる。 本研究においては、COXのサブユニットであるCOX6A1が欠損したマウス組織の解析を行うことにより、サブユニットの有無がCOXの複合体の形成や安定性、さらには呼吸鎖にもたらす影響を調べている。本年度においては、COX6A1ノックアウトマウスとコントロール間で坐骨神経の電子顕微鏡による観察を行い、得られた画像から各構造の特徴を数値化し、比較して検証した。また、前年度に引き続き、筋組織特異的アイソフォームであるCOX6A2が、COX6A1の欠損を補償している可能性を調べるために、各アイソフォーム特異的な蛍光プローブを複数設計して、その発現量を種々の組織間で比較している。これは、COX6A1が心臓および筋肉を除く幅広い組織で発現しているにもかかわらず、COX6A1欠損個体が末梢神経特異的に障害を示すことの説明となりうるためである。これらにより、COXアセンブリプロセスの理解を深める新しい知見をもたらすことが期待される。また、組織間での系統的な比較からは、CMTRID のみならず、組織特異性を示す他の疾患の分子病態や発症機構の解明につながりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COX6A1ノックアウトマウスとコントロール個体を使用した組織観察や、COX関連遺伝子のアイソフォームを含めた発現解析など、これらの進捗は当初の研究計画に沿って予定通り実施されている。
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今後の研究の推進方策 |
COXサブユニットまたは、呼吸鎖複合体のタンパク質を、アクリルアミドゲル電気泳動によって分離する。その際、タンパク質の高次構造や複合体構造を保持したまま、分子の大きさに従って分離するために、BN-PAGEを利用することに加えて、さらに二次元目の泳動を行う。なおこれらの二次元電気泳動は、分離する対象の複合体タンパク質にあわせた条件を選択する。また、ミトコンドリア検体において、呼吸鎖複合体I~IVの各酵素活性を測定する。COX6A2の発現解析についても引き続き実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ミトコンドリアの調製方法を工夫することにより、当初計画より経費の使用が節約できたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
新組織特異的アイソフォームCOX6A2がCOX6A1の欠損を補償している可能性について、より詳細に解析する目的で使用する。
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