研究実績の概要 |
本研究は、NK細胞受容体NKG2DのリガンドであるULBP遺伝子群に着目し、遺伝子領域のゲノム多様性と個々の遺伝子の発現性との関連、遺伝子多型とHIV/AIDS感受性・SIV免疫応答性との関連、また、遺伝子多型と自己免疫疾患・慢性疾患との関連を検討し、ULBP遺伝子群の多型がNK受容体機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的としており、本年度は以下の成果を得た。 霊長類ULBP遺伝子群の進化学的検討では、重複遺伝子であるULBP5.1, 5.2において、アカゲザルでそれぞれ18、11種、カニクイザルでそれぞれ11種と13種の新規多型を同定した。旧世界ザルULBP1~5遺伝子について、ヒトやチンパンジー、その他の霊長類を加えた系統樹解析の結果、ヒトのULBP遺伝子は旧世界ザルULBP2-ULBP5の共通祖先遺伝子より分岐したと考えられた。さらに、ヒトにのみ存在し、旧世界ザルには見出されていないULBP6/RAET1L遺伝子は、旧世界ザルULBP2遺伝子の重複後、一方の遺伝子が進化の過程で分岐し、ヒトにのみ誕生したものと考えられた。 一方、自己免疫疾患については、前年に引き続き、ULBPと共にNKG2Dのリガンドであることが知られているMICA129番アミノ酸多型について検討した。クローン病については患者数を増やして検討したところ、アレル頻度に有意差は認められなかった。一方、高安病、潰瘍性大腸炎患者の解析では、共に患者群におけるValの有意な増加を認めた。両疾患は共にHLA遺伝子との関連が知られていることから、高安病患者に高頻度で認められるHLAハプロタイプについて、HLA-B, MICA, DRB1の3座で検討したところ、HLA-B*52とMICA-129Val アレルは、それぞれ独立に発症リスク因子となっていることが示唆された。
|