研究課題
ゲノムの一次構造の変化と遺伝性疾患発症の関連が次々に明らかにされているが,ゲノムの一次構造の変化を伴わないエピジェネティックなメカニズムがあることも知られてきている.エピジェネティック解析にも種々あるが,本研究では,相同染色体の一方に疾患関連遺伝子のゲノムバリアントを有する症例において,ゲノムバリアントによる遺伝子発現の影響を,1細胞(間期核)単位でかつ相同染色体を区別して可視化することを可能とするRNA-FISH法を用い,その解析法の確立と,それによる新知見を得ることをめざした.研究期間初年度に,3色RNA-DNA連続FISH法の手技を確立し,次年度にXIST遺伝子をRNAプローブとし,Xpに部分欠失を有する2名の保因者女性を対象としたX染色体不活化(XCI)パターン解析により,本解析法の有用性を確認した.また,XCIの制御に関連すると考えられているCTCF遺伝子の欠失を有する先天異常女児2症例において,XCIの異常パターンの有無について解析し,異常パターンが確認されないという結果を得て,CTCFの欠失はXCIに影響を及ぼさないと考えた.11p13に構造異常を有する無虹彩症例におけるPAX6遺伝子をプローブとしたRNA-FISH解析においては,材料として用いたBリンパ芽球様細胞株でPAX6遺伝子の発現を示すシグナルが十分な蛍光強度に検出されず,評価困難であることが確認された.その結果をうけ最終年度に,Bリンパ芽球様細胞株の次に遺伝性疾患患者の解析に材料として用いることが多い皮膚線維芽細胞株を細胞バンクより入手し,RNA-FISH解析の材料としての適性確認をめざし,マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を実施し解釈を進めている.RNA-FISH法による1細胞発現解析が適した候補遺伝子と材料の組み合わせを確認し,今後解析する症例の効率的な選択に役立たせることができる.
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
J Med Genet.
巻: 54 ページ: 836-842
10.1136/jmedgenet-2017-104854.