研究実績の概要 |
DHEA (Dehydroepiandrosterone)は、コレステロールから生成され、弱いアンドロゲン活性を持つ。DHEAは免疫機能の維持やストレスへの抵抗力などに関わるホルモンであることも知られている。本研究では、子宮内膜癌における DHEA について検討を行った。まず、子宮内膜癌組織中の DHEA濃度を LC-MS/MS にて測定した。また、DHEAの硫酸抱合酵素であるDHEA sulfotransferase (DHEA-ST) およびその脱硫酸にかかわるSteroid sulfatase (STS) の発現について免疫組織化学にて検討した。結果、癌増殖マーカーである Ki-67 と DHEA 濃度との比較では逆相関が認められた。免疫組織学の結果については、STS陽性症例では子宮内膜癌組織中のDHEA濃度が優位に高いことが明らかとなった。 DHEAは種々の合成酵素によってアンドロゲンやエストロゲンに変換されるが、それらの濃度との関係についてさらに検討を行った。LC-MS/MSにてエストロゲン(estradiol, estrone)、アンドロゲン(testosterone, 5a-dihydrotestosterone)およびグルココルチコイド(cortisol, corticosterone)を測定し、DHEAを含めて階層的クラスター解析を行った。結果、DHEAはアンドロゲンやエストロゲンと同一クラスターには分類されず、グルココルチコイドと同一クラスターに分類された。 以上、DHEAは子宮内膜癌において癌増殖抑制に関連すると考えられ、STSの免疫組織化学が代替マーカーとして有用であると考えられる。子宮内膜癌ではDHEAは従来考えられてきた性ホルモンの前駆物質としての位置付けよりも、グルココルチコイドと同様にストレスホルモンとしての位置付けが高い可能性が考えられた。
|