研究実績の概要 |
本研究では, 原発性胆汁性肝硬変(PBC)では, 「胆管細胞のオートファジー異常が自己抗原の異常表出や免疫炎症機構の制御異常を介して自己免疫性発症機構に関与する」, という仮説を検証し, PBCの病態解明とオートファジー異常の制御による新たなPBC治療法の分子基盤の確立をめざしている。また, 胆管でのオートファジー異常の検出による新しいPBCの病理診断マーカーの開発も目ざしている。 本年度は, PBCとウイルス性肝炎などの対照肝疾患の肝組織を用い, 免疫組織化学的手法で, ①PBC胆管のオートファジー異常, ミトコンドリア抗原の異常発現の発生状況の解析, ②オートファジー異常, ミトコンドリア抗原の異常発現のPBC病理診断マーカーとしての有用性の検討を行った。 その結果, ①PBCの胆管病変部胆管では, オートファジー異常を示すp62/SQSTMの顆粒状蓄積, オートファジーマーカーLC3の顆粒状蓄積, ミトコンドリア抗原PDC-E2, cytochrome C oxidase (CCO)の顆粒状発現が疾患特異的に認められた。②ヒトの移植後急性・慢性拒絶, 移植後PBC再発症例の生検・移植肝, 原因不明肝硬変肝の検討から, 移植後PBC再発症例の胆管においても, ①で確認されたPBC特異的なオートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現のパターンが認められることが明らかになった。オートファジー関連分子とミトコンドリア抗原は, 肝移植後肝生検や原因不明肝硬変においてもPBCの病理診断マーカーとして有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り, 免疫組織化学的手法で, PBC胆管のオートファジー異常, ミトコンドリア抗原の異常発現の発生状況を検討し, 疾患特異性を確認した。さらに, 移植後肝の検討で, PBCの病理診断マーカーとしてのオートファジー関連分子, ミトコンドリア抗原の有用性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
胆管上皮細胞のオートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現の発生機構の解明:培養胆管細胞に種々の細胞ストレスを加えて, オートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現の発生機構を明らかにする。 ①小胞体ストレスの関与の検討:小胞体ストレス誘導性の疎水性胆汁酸GCDC, DCA, 飽和脂肪酸パルミチン酸の投与や, GWASで検出された小胞体ストレス関連分子Xのノックダウンを行う。また, 小胞体ストレス軽減作用を持つUDCAの効果についても検証する。 ②Anion exchanger 2 (AE2)の関与の検討:胆管細胞の保護に重要な重炭酸アンブレラ形成に関与するAnion exchanger 2 (AE2)のノックダウンを行い, 胆管細胞のオートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現との関連を検討する。
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