研究実績の概要 |
本研究では, 原発性胆汁性胆管炎(PBC)では, 「胆管細胞のオートファジー異常が自己抗原の異常表出や免疫炎症機構の制御異常を介して自己免疫性発症機構に関与する」, という仮説を検証し, PBCの病態解明とオートファジー異常の制御による新たなPBC治療法の分子基盤の確立をめざしている。また, 胆管でのオートファジー異常の検出による新しいPBCの病理診断マーカーの開発も目ざしている。 本年度は, 昨年度の検討で明らかとなったPBCの病変部胆管におけるオートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現の発生機構について, 培養胆管細胞に種々のストレスを加えて検討した。また, 胆管細胞の保護に働く重炭酸アンブレラ形成に関与するAnion exchanger 2 (AE2)とオートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常の関連についても検討した その結果,培養胆管細胞を用いた検討で, PBC特異的なオートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現が, 胆汁酸GCDCや飽和脂肪酸パルミチン酸の投与によって再現できること, オートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現は小胞体ストレスを介して誘導されることを確認した。実際に, 小胞体ストレス軽減作用を持つUDCAはオートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現を軽減した。また, PBCの病変部胆管にはAE2発現の低下があり, オートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現との関連を認めた。1)AE2発現の低下がオートファジー異常を誘導する可能性, 2) オートファジー異常によってAE2発現が低下する両方の可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,培養胆管細胞を用いた検討で, PBC特異的なオートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現が, 胆汁酸GCDCや飽和脂肪酸パルミチン酸の投与による小胞体ストレス誘導を介して再現できることを確認した。実際に, 小胞体ストレス軽減作用を持つUDCAはオートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現を軽減することが明らかとなった。 また, 胆管保護作用のあるAE2発現の低下とオートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現との関連が明らかとなり, PBCの病態形成に関与する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
胆管上皮細胞のオートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現の発生機構の解明: ①AE2の関与の検討:胆管細胞の保護に重要なAE2のノックダウンを行い, 胆管細胞のオートファジー異常/ミトコンドリア抗原異常発現との因果関係を検討する。 ②AMAやミトコンドリア抗原特異的T細胞とオートファジー異常胆管細胞との反応性の証明:培養胆管細胞に細胞ストレスを加えて, ミトコンドリア抗原の発現異常を誘導する。標識した抗ミトコンドリア抗体(AMA)を加えて, 胆管細胞表面上でのミトコンドリア抗原の発現異常の検出や, 細胞内への取り込み, 胆管細胞の増殖活性や細胞障害活性を検討する。後半は研究の総括を行う。
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