研究実績の概要 |
カロリ病+先天性肝線維症の新たな治療法を見出すことを目的とし,カロリ病+先天性肝線維症および常染色体劣性多発嚢胞腎(ARPKD)の動物モデルとして確立されたpolycystic kidney(PCK)ラットを用い,特にマイクロRNAに着目した検討を行った.平成27~28年度はPCKラットから単離した培養胆管細胞を使用した検討で,PCKラット胆管細胞でHedgehogシグナル伝達系を促進するSmoothenedの過剰があり,これはmiR-125b-1-3pの発現低下に関連した現象であること,およびSmoothenedアンタゴニストであるcyclopamineがPCKラット胆管細胞の過剰な増殖を抑制することをin vitroで見出した.3年次計画の最終年度である平成29年度は,PCKラットへcyclopamineを投与し,Hedgehogシグナル伝達系の阻害が胆管拡張と肝線維化に及ぼす影響をin vivoで検討した.PCKラットにcyclopamine(10 mg/kg)を4週間,腹腔内に連日投与したところ,肝内胆管拡張と腎嚢胞の形成を対照群と比較して有意に抑制することに成功した.Cyclopamine投与群において胆管細胞の細胞増殖活性(Ki67標識率)は対照群より有意に低く,胆管細胞におけるcyclin D1の発現も抑制された.血液生化学的な特徴として正常ラットと比較してPCKラットはALTとALPが異常高値を示すが,cyclopamine投与は血清ALT, ALP値を有意に低下させた.以上の結果から,Hedgehogシグナル伝達の阻害はカロリ病+先天性肝線維症の新たな治療標的となる可能性が示された.一連の成果を英文論文としてThe American Journal of Pathology誌に投稿した結果,Major revisionとなり現在,追加実験を行っている.
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