研究課題/領域番号 |
15K08343
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小林 基弘 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (00362137)
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研究分担者 |
川島 博人 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (50260336)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 硫酸転移酵素 / 硫酸化糖鎖 |
研究実績の概要 |
潰瘍性大腸炎は,粘膜固有層のびまん性リンパ球・形質細胞浸潤を病理組織学的特徴とするが,このリンパ球浸潤は,リンパ球表面の L セレクチンと,高内皮細静脈様血管内腔面の硫酸化糖鎖との結合によって惹起される.高内皮細静脈における硫酸化糖鎖の生合成は,二種類の硫酸転移酵素 GlcNAc6ST-1,GlcNAc6ST-2 によって相補的に制御されているが,潰瘍性大腸炎では前者が優位に働いていると考えられる.この硫酸転移酵素の潰瘍性大腸炎の病態形成における役割を,人体病理組織の組織学的解析,モデル動物の病態解析,モデル細胞の糖鎖解析により多層的に解析し,明らかにすることが今回の研究の目的である.
平成 28 年度は硫酸転移酵素 GlcNAc6ST-1 および GlcNAc6ST-2 のダブルノックアウトマウスおよびコントロールとして野生型マウスにデキストラン硫酸ナトリウム(平成 27 年度に最適化済み)を経口投与し,実験的大腸炎を作製した.組織学的解析の結果,両系統のマウスとも病理組織学的にヒト潰瘍性大腸炎類似(ビラン・潰瘍形成,cryptitis,crypt abscess の形成)の大腸炎を発症したが,その炎症の程度には差が認められ,その差は硫酸化糖鎖の発現量ないしは硫酸化糖鎖の足場となるキャリアタンパク質の発現量の差に起因するものと考えられた.現在,この仮説を証明すべく,定量的 PCR や,硫酸化糖鎖およびそのキャリアタンパク質に対する免疫組織化学的解析,さらにはモデル細胞を用いたリンパ球接着実験を行っているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成 28 年度研究計画の最重要項目である潰瘍性大腸炎モデル動物の作製に成功しており,また硫酸転移酵素 GlcNAc6ST-1 および GlcNAc6ST-2 のダブルノックアウトマウスと,コントロールの野生型マウスの間に炎症程度の差が認められていることから,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
人体病理組織材料の解析と並行して論文執筆を進めていきたい.
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