研究課題
今年度は線維芽細胞に対するテネイシン-C(TNC)の効果について検討を行った。プラスチック上で培養したヒト乳腺線維芽細胞(HMF)はコントロール群では細長い紡錘形で一定の方向性を示したが、 TNC添加群 (10 μg/mL) では星状の細胞突起を有し無秩序に配向した。カバーガラス上では、TNC添加群は互いに凝集しクラスターを形成した。ウエスタン・ブロットで癌関連線維芽細胞マーカーのタンパク質発現を検討すると、TNC添加で カルポニン、α-平滑筋アクチン(SMA)発現が有意に増加し、筋線維芽細胞形質への変化が顕著であった。HMFの蛍光免疫染色では、TNC処理でストレスファイバーの発達とカルポニンおよびα-SMA陽性細胞の増加がみられた。ヒト乳癌組織を用いた免疫組織化学染色では、癌巣周囲及びTNC陽性間質中にカルポニンおよびα-SMA陽性細胞が多数観察された。TNC添加はHMFのコラーゲンゲル収縮能を上昇させた。さらに、TNC添加はI型およびIII型コラーゲンの発現に変化を及ぼさなかったが、TNCのmRNA自体の発現を増加させ、フィブロネクチンおよびシンデカン-4をタンパク質レベルで発現を上げた。これらの発現は筋線維芽細胞に分化していない細胞で増加していた。加えて、皮膚線維芽細胞ではCalponin発現誘導は弱く、乳癌皮膚浸潤部でもその傾向がみられ、乳腺線維芽細胞でこれらの形質変化はより顕著であることが示唆された。これらより、TNCはHMFを高収縮性の筋線維芽細胞へ形質転換させ、乳癌特有の癌間質形成に寄与していると考えられた。
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