研究課題
本年度は、プロテオーム解析で得られた昨年度のデータから、IgG4関連硬化性胆管炎や原発性硬化性胆管炎で発現が亢進しているタンパクに対して、局所での発現をより詳細に検討した。予備実験として発現量に有意な差があったタンパクに対して免疫染色を行うことで、各疾患で強発現し、免疫や細胞外マトリックスのリモデリングに関与していると推定される分子を選択した。具体的には、IgG4関連硬化性胆管炎で発現が亢進しているタンパク群から、FYN-binding proteinとallograft inflammatory factor-1が選択された。これらの分子は病変局所で多数の細胞に発現していることが明らかとなり、2重染色ではこれらの分子は主としてマクロファージに発現しており、特にM2型マクロファージが活性化していると考えられた。原発性硬化性胆管炎ではFYN-binding proteinやallograft inflammatory factor-1の発現は部分的であり、プロテオーム解析の結果に合致していた。一方、原発性硬化性胆管炎に対しては、filamin-Aとfilamin-Cに着目して解析したところ、これらの分子はマクロファージと線維芽細胞に過剰発現した。一方、IgG4関連硬化性胆管炎を含めた他の胆道疾患での発現はほとんどなく、原発性硬化性胆管炎の細胞外マトリックスの変化に重要な分子であると考えられた。興味深いことに、filamin-Aは原発性硬化性胆管炎に合併した胆管癌でも発現が亢進しており、発癌プロセスにも関連している可能性がある。さらに、これらの分子は肝生検でもその過剰発現が確認でき、硬化性胆管炎の臨床的な鑑別にも有用である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に記載したとおりに進んでいる。
次年度は本研究の最終年度に相当する。IgG4関連硬化性胆管炎で発現が亢進していた分子に関して、他臓器のIgG4関連疾患でも同様に発現が亢進しているか検討する。硬化性胆管炎で得られた知見が、全身疾患であるIgG4関連疾患の他臓器病変にも応用できるか明らかにする。
初年度に消耗品費がかかった関係で、購入予定だった遠心機を購入しなかった。その残額を昨年度から持ち越し、ほぼ同額が本年度も持ち越しとなった。本年度自体の支出額は、予定支出額とほぼ同額である。
来年度は、免疫染色を含めた解析で消耗品費がかかると予想され、そちらに使用する。
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