研究課題/領域番号 |
15K08347
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
相島 慎一 佐賀大学, 医学部, 教授 (70346774)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肝細胞がん / 鉄代謝 / 酸化ストレスう / Hepcidin |
研究実績の概要 |
肝炎・硬変では鉄が 過剰に沈着しており、鉄が誘導する酸化ストレスが発がんに関わる。鉄は細胞を傷害する一方で 、細機能維持ために必要な金属あるので肝細胞癌では鉄代謝が適切に制御されていると予測している。平成27年度は肝細胞癌の外科切除症例をリストアップし、手術前血液データが十分であり、非腫瘍部の肝障害の程度が確認できる症例400例の腫瘍部の病理学的因子を評価した。次に、肝細胞癌90例の癌部および非癌部が含まれるパラフィンブロックについて、鉄染色(ベルリン青染色)にて癌部と非癌部での鉄沈着の程度を4段階に分類して評価した。また、非癌部の肝炎の状態、線維化の状態とウイルス感染の有無、脂肪沈着の程度により、背景肝障害をB型、C型、NASH、その他に分類した。その結果、非癌部の鉄沈着は、なし(n=37)、軽度(n=27)、中等度(n=14)、高度(n=12)で、肝障害の原因や肝炎・線維化の程度と鉄沈着には相関がみられなかった。腫瘍内では、腫瘍被膜、隔壁の一部に鉄の沈着、ヘモジデリン貪食マクロファージの浸潤を認め、壊死周囲やpeliosis周囲にも認められた。高分化型の5例のみに癌細胞内の鉄沈着を認めた。次に、肝細胞癌の凍結標本よりRNAを抽出しcDNAライブラリーを作成した。鉄代謝関連遺伝子として現在、Hepcidin、Ferroportin、transferin receptor 1/2のプライマーを作成し、発現解析を実施する段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の前半は、適切な対象症例の選択を中心に行い、臨床データと病理学的な基礎データの蓄積のために費やした。次年度以降もこのデータベースを基に解析を行っていく。鉄染色の予備実験、評価方法の基準を決定するの時間を費やした。27年度後半はRNAを抽出しmRNA発現の定量および解析を行うところまで進める予定であったが、耐震工事のための研究室移動があったため、設備機器の準備などでやや遅れていることと、初年度であるため研究成果は得られていない。平成28年度は遅れた分を取り戻し、効率的に研究を推進できるように努力する。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はまずmRNA発現解析のための陽性コントロールでの発現確認を行い。対象症例での発現解析を行う。腫瘍内、腫瘍外、癌細胞での鉄沈着の程度の異なる症例を選択して、mRNA発現解析を行うことにする。また年度後半からは臨床病理学的因子、鉄沈着の程度と遺伝子発現の関連について統計解析を行い、順次、肝内胆管癌での鉄沈着の評価、鉄代謝関連遺伝子の発現解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度はデータベース作成のために時間を費やし、当初の予定であった試薬購入を次年度に先延ばししたために、平成27年度使用額が大幅に抑えられた。年度末には研究室移動のために実験ができなかったことから、使用期限のある必要物品の購入を控えていた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は5月~6月にかけてmRNA抽出から解析に必要な試薬類、消耗品のために使用していく予定であり、年度後半には解析用ソフトを購入する予定としている。また、学会発表のための旅費としても使用する。
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