研究課題
本研究は、最終的に新規3細胞間タイト結合分子LSRを癌の診断・治療へ応用する。今年度は、子宮内膜癌および膵管癌の悪性化におけるLSRの役割およびメカニズムを、子宮内膜癌細胞株(Sawano)、膵管癌細胞株(HPAC)、正常子宮内膜上皮細胞および正常膵管上皮細胞を用いて解明した。今回の実験においても、以前報告したsiRNAによるLSRの発現低下が、転写因子TEAD1/増殖因子AREGを介して、癌細胞の遊走、浸潤を亢進していることが確認できた。この変化は、siRNAを用いてAREGの発現抑制により阻害され、さらにAREGを細胞外から処置することにより誘導された。このLSRの発現低下により誘導された癌細胞の遊走・浸潤のメカニズムとしては、1)Hippo pathway(YAP/AMOT/merin)を介した経路、2)タイト結合分子claudin-1を介してMMP1を増加させる経路があることを見出した。さらに、LSRに細胞外から特異的結合するリガンド Angubindin-1を作製処置しLSRの機能特にバリア機能を阻害した結果、LSRの発現低下と同様に癌細胞の遊走・浸潤が亢進した。正常上皮細胞においても、siRNAによるLSRの発現低下によりclaudin-1が誘導された。さらにLSRと同様に3細胞間に局在のみられるApoptosis-stimulating p53 protein 2 (ASPP2)においてもsiRNAを用いてASPP2の発現低下させた結果、子宮内膜癌細胞株において、LSRの発現低下とともに癌細胞の遊走・浸潤の亢進がみられた。ASPP2の発現低下による癌細胞の遊走・浸潤の亢進は、LSRを介した経路およびLSRと同様にHippo pathwayを介した経路が考えられた。以上のことは、LSRは複雑なメカニズムで癌細胞の悪性化に密接に関与していることが考えられた。
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