研究課題
本年度は唾液腺腫瘍の中で、粘表皮癌、腺様嚢胞癌、線条部導管腺腫に焦点を当て研究を行い、多くの新しい知見を明らかにすることができた。1.粘表皮癌においてamphiregukinの高発現がCRTC1-MAML2融合遺伝子陽性と関連することを明らかにし、この分子高発現が融合遺伝子有無の推定および良好な患者予後に関連することを明らかにした。2.T1/2N0M0の粘表皮癌においてCRTC1-MAML2融合遺伝子陽性症例は外科的手術のみで良好な予後を示すことを明らかにし、術後放射線治療が不要である可能性を指摘した。3.種々の癌精巣抗原が多くの悪性度高唾液腺癌で発現していることを示し、特にMAGE-A発現は腺様嚢胞癌においては不良予後と関連することを明らかにした。4.唾液腺線条部導管腺腫は稀な腫瘍であるが、血腫を示した症例を報告した。この腫瘍の診断では甲状腺乳頭癌との鑑別が問題となることを指摘した。近年、頭頸部腫瘍WHO分類が刊行されたが、この中に含まれる唾液腺腫瘍において、粘表皮癌、腺様嚢胞癌、明細胞癌、分泌癌の項を担当し、執筆した。その他、唾液腺腫瘍への理解が深まるよう、一般病理医、臨床医を対象に唾液腺腫瘍における遺伝子異常について解説書を執筆した。
2: おおむね順調に進展している
これまで本課題に即した研究発表が行われており、また予定された研究も満足のいく進捗を見せている。
今後も唾液腺癌の中で最も頻度が高い腺様嚢胞癌および粘表皮癌について研究を継続していく。腺様嚢胞癌では近年、新たな融合遺伝子が次世代シークエンスなどの技術により、いくつか報告されつつあるが、これらの遺伝子異常の持つ意義は明らかではない。1.当研究グループが蒐集した多数の症例を用いて、日本人におけるこれらの融合遺伝子を検索し、頻度を明らかにする。2.融合遺伝子と臨床病理学との関連を明らかにする。3.分子標的薬に関連したシグナル経路遺伝子異常について明らかにする。4.次世代シークエンスによる解析により新規遺伝子異常の同定に着手する。粘表皮癌においてはT1/2N0M0以外の粘表皮癌におけるCRTC1-MAML2融合遺伝子陽性の意義を多数例を用いて解析することを予定している。
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