研究実績の概要 |
当センターで手術を施行された卵巣癌201例について,年齢,組織型,病期,手術完遂度,無増悪期間(PFS),全生存期間(OS)などの臨床病理学的所見のデータベースを作成した.初発時201検体と化学療法後38検体からtissue microarray(TMA)を作成し,HDAC1, 6, 7の発現を免疫組織化学的に検討した。HDAC1の核内高発現群は漿液性癌(PFS, p<0.01; OS, p=0.02)や類内膜癌(PFS, p=0.03; OS, p=0.03)で有意に予後不良であったが,明細胞癌(PFS, p=0.17; OS, p=0.68)では予後への関与は明らかではなかった。それに対し,HDAC7の細胞質内高発現群は,明細胞癌(PFS, p=0.03; OS, p=0.06)で予後不良であったが,漿液性癌(PFS, p=0.35; OS, p=0.76) や類内膜癌(PFS, p= 0.42; OS, p=0.18)では予後への関与は明らかではなかった。多変量解析では,病期,手術完遂度,組織型に加えて,HDAC6の核内高発現(HR=3.51; 95% CI, 1.49 to 8.27, p<0.01)が独立した予後不良因子であった。HDAC6の核内高発現群について,サブグループ解析を行った結果,明細胞癌(OS, p=0.07),stage III/IV期(OS, p=0.07),手術完遂度・残存腫瘍1cm以上(OS, p<0.01)で予後不良の傾向がみられた。また,38例について,同一症例内で化学療法前に比して化学療法後では,HDAC1, 6, 7の発現増強がみられた。卵巣癌では,組織型毎にHDACの発現パターンや予後への関与が異なることが考えられ,これらの成果をOncology Letters (2018 Mar;15(3):3524-3531)で発表した。
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