研究実績の概要 |
研究初年度に潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)における組織形態学的な炎症活動性の評価基準の確立した。過去の研究成果によりIBD特異的バイオマーカーであるOLFM4発現がUCではNF-kB/p65、CDではc-Junによって発現誘導されていることから、UC及びCDの病理組織材料におけるOLFM4発現を検索したところ、CDではリン酸化c-Junは明瞭な炎症活動性に沿った発現を示すのに対し、リン酸化NF-kB/p65発現は認められず、NF-kB/p65リン酸化がUC特異的であることを確認した。in vitro解析では、LPS刺激によってNF-kBのリン酸化が亢進すると共に、MPA刺激でJNK, c-Junのリン酸化が亢進し、OLFM4発現と相関することを確認した。 プロモーター解析により、Jun/Fos、p65それぞれによってOLFM4は発現誘導を受けた。複数種の抗OLFM4抗体を用いて蛋白発現解析や、脱糖鎖処理によって腫瘍特異的発現を示す分子の変化が確認され、腫瘍特異的OLFM4の糖鎖修飾が確認された。OLFM4とfrizzled7との結合、EMT関連分子の発現抑制が明らかとなり、大腸癌でβ-cateninの核内移行とOLFM4発現の相反を示された。OLMF4がβ-cateninを介したEMTを抑制している可能性 、IBD関連腫瘍が通常大腸癌に比して低分化であることとの関連の可能性が考慮された。孤発性大腸癌においてOLMF4発現とβ-cateninの相反する発現と組織形態学的なEMT及びEMT発現に相関が得られた。IBD関連腫瘍先進部における解析では、OLFM4発現とβ-cateninの相反する発現が認められ、E-cadherin発現低下を核に下が、Slug発現は伴っていなかった。IBD関連腫瘍の先進部の形態変化は孤発性大腸癌とは異なる分子機構による可能性がある。
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