研究実績の概要 |
肺血管の肥厚や閉塞は、肺高血圧症(pulmonary hypertension; PH)をもたらすが、特発性に加えcombined pulmonary fibrosis and emphysema: CPFEを含む様々な肺疾患や膠原病、肝硬変などの消化器疾患に合併する。肺高血圧から右心不全、両心不全が引き起こされたり手術適応から除外されるなど本病態は多くの患者様にとって重要な予後因子になる。病理学的には内膜や中膜の肥厚、リモデリングによる肺細動脈の閉塞が特徴で現在のところ、I群の肺高血圧症に対して3系統の血管拡張剤治療薬が使用されているが、基礎疾患別の治療方法は確立されてない。肺血管病変それ自体が背景疾患を反映していると考えられることから、本研究では、1群の肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension; PAH)のうち特発性(idiopathic PAH; IPAH)、結合組織病に伴うPAH、3群の肺疾患に伴うPH患者の剖検症例を対象に、臨床病理学的解析を行った。iPAHで用いられている治療薬剤のレセプターなどの発現(PDE5, ERA, ERB, PGI2, sGCα, sGCβ, PGI2)を内膜、中膜、外膜における発現程度に関して免疫組織化学染色にて評価し、スコア化し疾患別の特徴を明らかにした。また、膠原病別の肺高血圧症の特徴を明らかにするために全身性エリテマトーデス(SLE)と強皮症(SSc)を背景疾患に持つ剖検症例の肺動脈、肺静脈、毛細血管病変に関して比較検討を行った。SLE-PAHでは微小血栓形成に加え、血管炎による肺胞出血が合併し、SScでは肺動脈壁の肥厚に加え、肺静脈の線維性狭窄、毛細血管増生、間質性肺炎、心筋の線維化が合併しており、それぞれの病態に応じた治療戦略が必要と考えられた。
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