研究課題/領域番号 |
15K08360
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
矢澤 卓也 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50251054)
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研究分担者 |
原 由紀子 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40313267)
佐藤 華子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (60438132)
三好 洋 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (80322519)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肺癌 / 神経内分泌癌 / 形質転換 / 非神経内分泌癌 |
研究実績の概要 |
III型およびIV型POU転写因子を強制発現することにより非小細胞肺癌細胞に惹起される未熟神経形質の獲得現象を形態的に証明するため、各遺伝子導入株をNOD-SCIDマウスに皮下移植することにより形成される腫瘍組織について、病理組織学的、免疫組織化学的に検討した。その結果、POU3F4およびPOU4F2導入により、大細胞癌株がヒト肺癌組織で見られる小細胞癌ないし大細胞神経内分泌癌としての形態的特徴を有する形態を示すようになった。また免疫組織化学的に、CD56(NCAM1)やsynaptophysinなど神経内分泌マーカーを強く発現するようになった。これらの事実より、POU3F4およびPOU4F2導入により、神経内分泌形質を有する肺癌細胞が作成されたことが証明された。一方で、複数の腺癌細胞株を用いIII型およびIV型POU転写因子を強制発現する株を樹立し、同様の形質転換現象が惹起するか否かについて検討を行った。その結果、III型/IV型POU転写因子を高発現する株の樹立に成功したが、コントロール株と比較して強い形態変化は惹起されず、また神経内分泌マーカー発現の亢進も認められなかった。このことから、III型/IV型POU転写因子導入に伴う形質転換現象はいかなる肺癌細胞にも普遍的に起こる現象ではなく、分化の低下した肺癌細胞にのみ起こる現象であることが判明した。 次に、POU3F4およびPOU4F2導入により神経内分泌癌細胞への形質転換が起こった細胞株を用いGeneChip解析を行うことにより、いかなる遺伝子発現変化が引き起こされているかについて検討した。その結果、POU3F4およびPOU4F2導入により神経内分泌マーカー遺伝子発現の著明な亢進が明らかになるとともに、リプログラミングに係わる遺伝子の強烈な発現亢進が引き起こされていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の推進により、肺癌細胞における形質転換現象にはリプログラミング現象が深く関与しているという、予想だにしなかった事実を突き止めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
形質転換現象に伴う神経内分泌形質の獲得は、幼若な神経系細胞に特異的に発現するPOU3F4/POU4F2の関与が強く示唆されるが、同時にこのような現象はいかなる肺癌細胞にも普遍的に生じるものではなく、細胞分化の低下したある種の肺癌細胞に限定的に惹起される現象であることが示唆されるため、今後はどのような状態にある肺癌細胞において神経内分泌形質を獲得することができるのかについて焦点を当て、さらに研究を推進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予測を超える大きな研究成果が出たことから、遺伝子ノックダウン実験が未施行であるため。
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次年度使用額の使用計画 |
肺癌細胞に神経内分泌形質転換を起こさせる普遍的な因子を同定したのち、遺伝子ノックダウン実験を遂行する計画である。
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