研究課題
本研究の目的はEGFR遺伝子に変異のある肺腺癌から高悪性度症例を抽出し、その病理学特徴を明らかにする事である。前年度の研究によって、直径3cm以下のEGFR遺伝子変異(+)肺腺癌において、リンパ節転移を有した高悪性度症例では、微小乳頭状亜型の成分を有意に多く含むことを明らかにした。微小乳頭状成分を一定の割合以上有した症例では術後再発危険度が有意に高かった。本年度は進行して手術不適となった内科症例177例の検体を用いて、EGFR変異型肺腺癌症例における病理学的特徴をより明らかにして、前年度の外科症例における解析との整合性について検討した。結果、内科症例においてもEGFR変異型肺腺癌では非EGFR変異型肺腺癌と比較して、微小乳頭型成分を有する頻度が有意に高かった(68 vs 30%)。EGFR変異型肺腺癌の進行がんへの進展過程において、微小乳頭型成分が重要であることが明らかになった。微小乳頭状成分を有したEGFR変異型肺腺癌がなぜ高悪性度となるのかのメカニズムをさらに検討する必要があり、肺腺癌の浸潤に関与することが知られているp53遺伝子に注目した。微小乳頭状組織亜型を有するEGFR変異型肺腺癌35例にp53染色を行い、微小乳頭状組織亜型とそれ以外の成分(細気管支肺胞上皮型や腺房型、乳頭型、充実型)との染色性を比較検討した。p53染色の結果では微小乳頭型成分とそれ以外の成分の間で、陽性率、染色性に有意な差は見られなかった。p53遺伝子は微小乳頭状組織亜型への進展に特異的に関与する遺伝子ではないことが示された。現在レーザーマイクロダイセクションを用いてEGFR変異型肺腺癌の組織標本から微小乳頭型成分とそれ以外の組織亜型の癌成分を別々に切り分け、mRNAについて、マイクロアレイを用いて網羅的遺伝子解析を行い、解析を進めている。
3: やや遅れている
レーザーマイクロダイセクションを用いた網羅的遺伝子解析をもう少し進めている予定であったが、十分な量、質のmRNAを回収することが難しかった。また、検体の保存状態も予想より悪い例が多く、症例の選別、レーザーマイクロダイセクション、mRNA回収、抽出の方法の改良に時間が多くを取られ、研究の進行が全体にやや遅れた。
レーザーマイクロダイセクションに用いる症例、組織検体の変更、ダイセクション機器、方法の変更、改良により、変切り取る組織量が増加し、回収できるmRNA量、質の改善が得られつつある。今後マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子解析がスムーズに進み、来年度中には大きく研究の進行が期待される状況になってきている。
本年度レーザーマイクロダイセクションを用いた網羅的遺伝子解析をもう少し進めている予定であった。しかし、予定していた組織検体からのmRNAの回収量、質が十分ではなく、また遺伝子の保存状態も予想以上に悪く、研究の進行が遅れた。その後実験条件の改善のための検討に時間がかかり、網羅的遺伝子解析に予定していた執行使用額が当初の計画より小さくなった。
その後、レーザーマイクロダイセクションに用いる症例、組織検体の種類の変更、ダイセクション機器の変更、方法の改良により切り取る組織量の増加が得られ、回収できるmRNA量、質の改善が得られつつある。来年度中に遺伝子の網羅的解析研究の進行が大いに進行することが期待される状況となっており、最終的には予定通りの研究進行状況となって、予定額の執行がほぼ達成できると考えられる。
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