研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウスである変異SOD1マウスの実験に関しては横隔神経、坐骨神経において、野生型マウスと比較 し有意にCD68陽性細胞が観察され、単球由来の細胞浸潤増加がみられた。同時に横隔膜、腓腹筋ではAChRγサブユニットの上昇がみられた。 経時的な変化の検討では、生後10,20,55日目、症状が出現する77日目そしてエンドステージである125日目の合計5時期にわけてモデルマウス、野生型マウスを屠殺した。定量RT-PCR用と病理組織用(蛍光免疫染色)にわけてそれぞれ各時期にモデルマウスn=6と野生型 マウスn=6を用意し合計 n=60とした。各個体から横隔膜-横隔神経-頸髄(C4)の経路と腓腹筋-坐骨神経-腰髄(L5)の経路の2つの神経系-筋肉系を採取し種々の評価を行った。 ALSモデルマウスでは野生型マウスと比較し、脱神経が55日以降、末梢神経の炎症性変化が77日目以降で出現していた。一方で脊髄レベルでは77日目以降で、炎症性変化が観察されていた。モデルマウスを用いたこれらの研究からALSの形態学的変化の拡がりは、脊髄中心というよりは筋肉や神経筋接合部からはじまる”dying back現象”が有力であると推測した。 ALS剖検例でも検討を行った。下肢の筋力低下が顕著であった例では坐骨神経における炎症の拡がりに差異はみられなかった。一方で死亡した時点で下肢の筋力がある程度保てていた剖検例もあり現在検討を行っている。 モデルマウスのみならず、ヒト剖検例でも同様のdying backを示唆する所見がみられれば、今後のALSのより効果的な治療ターゲットになりうると考えている。
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