研究課題
当研究所において病理学的検索を行い、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と確定診断された症例において、剖検時に嗅球、嗅索および嗅粘膜も採取できた例の蓄積は平成29年度末までに13例となった。プリオン蛋白(PrP)遺伝子変異解析および多型解析、大脳皮質のプロテアーゼ抵抗性PrPのウエスタンブロット解析も行い、MM1型孤発性CJDと分子遺伝学的に診断された10例について、嗅球、嗅索および嗅粘膜の抗PrP抗体を用いた免疫染色による検討に加えて、古典的な神経病理学的手法を用いた検討も行った。現時点までの病理学的検討において、全例で嗅球の糸球体の構造は保たれており、長期経過例でも僧房細胞や顆粒細胞の神経細胞脱落は明らかでなかった。嗅球と嗅索においてはグリオーシスと多数のアミロイド小体が観察されたが、海綿状変化は明らかでなかった。前嗅核の神経細胞は長期経過例でも保たれていた。免疫染色では、嗅球の灰白質に微細顆粒状のシナプス型PrP沈着を認め、特に糸球体、僧房細胞層、顆粒細胞層で強かった。長期経過例ではプラーク型PrP沈着も一部に認めた。嗅索では、前嗅核にシナプス型のPrP沈着が認められたが、髄鞘やアミロイド小体にPrPの染色性は明らかでなかった。嗅粘膜では粘膜上皮の一部にPrP陽性所見を認めた。これらのPrP沈着所見は、短期経過例から長期経過例までほぼ同様に観察された。凍結保存した嗅球および嗅粘膜のウエスタンブロット解析を5例で施行し、嗅球は全例で、嗅粘膜は2例で大脳皮質と同様の1型PrPを示唆するバンドパターンが得られた。嗅球の病理所見やPrP沈着所見は、海馬や辺縁系の所見と類似し、病初期からPrP沈着が認められるものの、CJDの病変進展に対し抵抗性があると考えられた。また、嗅球は嗅神経を介して嗅粘膜や外部と接しており、異常PrPが外部から感染した可能性が否定できない所見と思われた。
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