研究課題/領域番号 |
15K08370
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 鮎子 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (20419823)
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研究分担者 |
辻村 亨 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20227408)
篠原 義康 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (60723509)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 悪性中皮腫 / がん幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、中皮腫細胞株に人工多能性幹細胞(iPS細胞)誘導因子を遺伝子導入して人工中皮腫幹細胞の作製を試み、人工中皮腫幹細胞の生物学的特性を糸口にして、中皮腫幹細胞およびその増殖・生存に関連する分子を標的とした治療法の開発を目指すものである。本年度は、その第一歩として、免疫不全マウスに造腫瘍能を示す3種類の中皮腫細胞株を遺伝子導入細胞として選別し、遺伝子導入に必要なマウスレトロウイルス受容体を発現させた。また、iPS細胞誘導因子(OCT3/4, SOX2, KLF4, c-MYC)の遺伝子を導入するマウスレトロウイルスベクターを準備した。更に、悪性胸膜中皮腫の臨床検体を用いて、有用な中皮腫幹細胞マーカーの同定を目的として、化学療法後に残存する抗がん剤抵抗性の腫瘍細胞で強く発現する分子を探索し、細胞接着分子CD146の発現強度が悪性胸膜中皮腫の悪性度に相関すること、再発症例においてCD146とは別の細胞接着分子の発現が観察されることを見出した。そこで、セルブロックを用いた免疫染色により、この細胞接着分子を発現する細胞が一部に含まれていることを確認した中皮腫細胞株をソーティングして陽性群と陰性群を分取し、それぞれの群におけるiPS細胞誘導因子の発現をリアルタイムPCR法で調べた。OCT3/4, SOX2, KLF4は、陽性群において強い発現が検出されたが、陰性群ではほとんど検出されなかった。この細胞接着分子は中皮腫幹細胞マーカーとして有用であると考えられることから、今後は、陰性群にマウスレトロウイルスを用いてiPS細胞誘導因子を遺伝子導入し、この細胞接着分子やCD146をマーカーとして人工中皮腫幹細胞の作製を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
iPS細胞誘導因子を導入するための中皮腫細胞株の選別、レトロウイルスベクターの準備、新たな中皮腫幹細胞マーカーの同定を行い、人工中皮腫幹細胞の作製のための実験環境を整備したが、人工中皮腫幹細胞の樹立には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
中皮腫細胞株にiPS細胞誘導因子を遺伝子導入し、得られた初期化細胞から種々のマーカー発現などに基づいて、がん幹細胞の候補を分取し、自己複製能や造腫瘍能などの特徴を示すクローンを人工中皮腫幹細胞として単離する。これらの細胞を免疫不全マウスの皮下および胸腔内に移植して、腫瘍の組織像、浸潤・転移能、化学療法に対する感受性などを病理組織学的に解析する。また、中皮腫のがん幹細胞との関連が示唆される分子について、中皮腫の腫瘍検体を用いて臨床病理学的な検討を行うとともに、中皮腫細胞株および人工中皮腫幹細胞を用いてその機能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に消耗品の購入に使用したが、使用を計画していた物品(消耗品)を変更したこと、物品の価格が変更されていたことなどにより、18,796円の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、研究を円滑に進めるための消耗品の購入に当てる。
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