研究課題
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)におけるSTAT3活性化状態および臨床病理学的所見との具体的な関連性を解析した。2003年から2017年において新規に診断されたDLBCL症例のFFPE検体および臨床情報を収集した。HE染色において生検組織中に腫瘍細胞が50%以上含まれる298症例を抽出し、リン酸化STAT3(pSTAT3)を含む免疫染色およびEBER in situ hybridizationを行った。本年度において、予定していたゲノム解析は全て終了し、全298症例中、GCB型148例、non-GCB型131例の合計279例における遺伝子変異を調べることができた。このうち、臨床情報も確認出来た症例は262例であった。pSTAT3は122例(43.7%)に陽性を示した。pSTAT3発現はnon-GCB型に有意に多く認められた(P<0.001)。MYD88 L265P変異はnon-GCB型に多く(P<0.001)、これらはpSTAT3発現を示した(P<0.001)。一方で、L265P以外のMYD88変異例はGCB型に多く(10/14; 71.4%)、pSTAT3発現に関連性を認めなかった(P=0.96)。STAT3変異を有する症例は15例(5.4%)あり、これらはpSTAT3発現と有意に相関した(P=0.02)。EBER陽性例はpSTAT3発現を示しやすかった(P<0.001)。一方、SOCS1のナンセンスあるいはフレームシフト 変異は23例(8.2%)存在し、興味深いことにこれらはpSTAT3発現を示しにくい傾向にあった(P=0.08)。GCB型とnon-GCB型間(P=0.24)や、pSTAT3発現の有無による予後の差は認めなかった(P=0.80)。STAT3変異を有する症例は予後が良い傾向を示した(P=0.09)のに対して、EBV感染例は有意に予後不良であった(P=0.01)。In vitro実験においてMYD88 L265P変異を有する細胞株はpSTAT3発現が陽性でJAK阻害剤に有効だったが、SOCS1変異株はpSTAT3を発現しておらず、JAK阻害剤に対して抵抗性を示した。
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