研究課題/領域番号 |
15K08372
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
松原 修 公益財団法人がん研究会, がん研究所 病理部, 研究員 (40107248)
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研究分担者 |
石川 雄一 公益財団法人がん研究会, がん研究所 病理部, 部長 (80222975)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肺線がん / 異型腺腫様過形成 / 上皮内腺癌 / 微小浸潤性腺癌 / 置換型腺癌 / 肺線維症 / 間質性肺炎 / 肺胞の細気管支化 |
研究実績の概要 |
[目的] 「間質性肺炎interstitial pneumonias/肺線維症lung fibrosisから細気管支上皮の増生、異型腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia (AAH)) 、上皮内腺癌(adenocarcinoma in situ (AIS))、 微小浸潤性腺癌(minimally invasive adenocarcinoma (MIA))、置換型腺癌(lepidic growth patternの腺癌)へと進展するのではないかとの仮説のもとに、肺線維症などの間質性肺病変を合併する肺腺癌と合併しないものを比較検討し、肺腺癌発生の機序の手がかりを探る。 [方法] 肺腺癌摘出手術材料を詳細に病理学的に検討し、間質性肺病変、細気管支・肺胞上皮の増殖性病変、肺胞の細気管支化(bronchiolization of alveoli、または細気管支化生bronchiolar metaplasia)の病変についての性格、頻度などを検討した。 [結果] 通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia (UIP))/蜂窩肺病変(honeycomb lesion)などの間質性病変が20.6%、AAHなどの肺胞上皮の増殖病変が23.6%、多発癌の症例が13.2%であった。肺胞の細気管支化の病変が23.5%もの高い頻度で認められた。 [結論] 肺胞の細気管支化病変はhoneycomb lesionの近傍により多く認められたのだが、今回は孤立した、honeycomb lesionの近傍ではない病変をカウントしたので、肺胞の細気管支化の病変そのもの頻度は、23.5+10.3=33.8%もの高い頻度で認められた。AIS、AAHなどの肺胞上皮の増殖病変に関連する可能性が高い病変であることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肺腺癌摘出手術材料を入手して、間質性肺病変、細気管支・肺胞上皮の増殖性病変、肺胞の細気管支化(または細気管支化生)の病変についての性格、頻度などをパラフィン標本で検討できたが、凍結材料も十分に採取することができている。ただ、凍結材料から、肺胞の細気管支化病変を掴むことが困難である。AISの病変は凍結材料の最終が可能であった。同じ症例で細気管支化病変、AIS、非腫瘍部分と3か所のmiRNA解析が困難となっている。パラフィン標本からの検討を試みている。こういうことから研究の進捗がやや遅れている状況です。
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今後の研究の推進方策 |
1.外科手術の凍結材料を用いて腺癌組織から肺胞の細気管支化の一連の病変について、miRNAの解析し、違いをみて、肺腺癌への進展の可能性のある重要なmiRNAを特定したいと考えている。 2.同様の症例について、SNP解析と発現タンパクのプロテオーム解析を行い、違いをみて、肺腺癌への進展の可能性のある重要なSNP、タンパクを特定したいと考えている。 3.肺癌の初期病変を検索する中で、肺癌組織の中、または周辺にリンパ球浸潤の目立つ症例に数多く目にすることとなった。折しも免疫チェック治療という話題が持ち上がり、肺癌の初期病変と何か関りがあるのだろうかと疑問に持ち、Programmed death 1 (PD-1)とPD-L1についても併せ検討しているが、肺腺がんの進展との関係を検索したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行にあたり、間質性肺炎、肺線維症、AAH、AIS、MIA、置換型腺癌と肺胞の細気管支化病変の実態に関する研究は進んだのですが、miRNA関係の研究が、検索する肺胞の細気管支化病変組織だけの採取のところで、困難しており、進んでいないために、研究費を残しています。今年度に使用するように考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
肺胞の細気管支化病変のmiRNA関係とプロテオーム関係の解析のための試薬を購入する予定です。
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